コールセンターの「人材不足」や「離職率の高さ」は、これまでも嫌というほど問題視されてきました。それぞれを打開する策もたくさん提示されてきましたが、残念ながら2つの問題をどちらも解決できているコールセンターは多くありません。
そのような中、コロナ禍を経てコールセンターでの働き方にも幅が出てきました。オペレーターがもつ働き方への価値観も変化してきました。
「離職予防」という言葉をご存じでしょうか。コールセンタージャパン2023年2月号で用いられた用語ですが、同記事では従来の離職予防策として、時給のアップ、設備の充実、表彰制度の3本柱があげられていました。これは今でも有効でしょうか。「既存のオペレーターを大切にするべき」とはよく言われますが、具体的にどのように大切にできるのでしょうか。
この記事では、なぜオペレーターが離職するのかという原因を明らかにしながら、今求められている働き方や、仕事に対する価値観を分析しつつ、離職予防として講じることのできる9つの策をご紹介します。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、17年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。
コールセンターの人材不足|女性の転職希望者をターゲットにして解消!? - TPIJ by CBA |
いまだにコールセンターの離職率が高い理由
使い古されたテーマではありますが、そもそもなぜコールセンターの離職率は高いのでしょうか。改めて簡単にまとめてみましょう。
株式会社ビズヒッツが実施した「コールセンターから異職種への転職理由に関する意識調査」によれば、コールセンターでの平均勤続年数は2年5ヶ月となっています。この数字は、他の業界での平均勤続年数と比較してもかなり短い年数です。
一例として、転職が多いと言われるアパレル業の平均勤続年数は、短い企業でも5.7年とされています。
ビズヒッツ実施のアンケートへ回答した約8割は3年以内に離職しているので、依然としてコールセンター業界の離職率が高いことは言うまでもありません。
なぜコールセンター業界の離職率は高いのでしょうか。離職理由として多いのは以下のような理由です。
- クレーム対応によるストレス
- 覚えることが多い
- クリアが難しいノルマ
- 不十分なサポート体制
- 上司による指示の違い
- キャリアの先行きが見えない/キャリアアップが難しい
- 収入が低い
コールセンターの離職率を下げるためには、上のような離職理由をなるべく多く、そして早く解決していく必要があります。ここからは、ポストコロナに突入した現在に効果的な離職予防策を紹介します。
今どきのコールセンター離職予防策9つ
離職予防の具体策を紹介する前に、今のオペレーターたちがコールセンターに何を期待しているのかを確認しましょう。電話代行ビジネスインフォメーションが実施した調査(対象:通販会社のコールセンター)によれば、職場に求める改善点のランキングは以下の通りでした。
- 在宅勤務にしてほしい
- マニュアルをやめて柔軟に対応させてほしい
- 録音をしてほしい
- 予備の人も入れておく
- 休憩を増やしてほしい
- お昼をゆっくり食べられる環境にする
上の結果で注目したいのは、求められている改善点が金銭面ではないことです。
給料や賞与といった金銭面での改善が求められているわけではなく、時間的、人員的、精神的な余裕がもてるような改善が求められています。
扶養控除の範囲内で働きたいオペレーターが多いからかもしれません。
今後、離職予防策を講じていく中では、「この策でオペレーターへ余裕を提供できるか」というポイントが重要になるでしょう。
ここからは、「お金よりも余裕」を重視する最近のオペレーターたちへ向けた離職予防策9つをご紹介します。
1. 働き方の多様化
「働き方を多様化する/柔軟にする」と聞くと、これまではオペレーターのシフト制が真っ先に思い浮かびます。すでにシフト制を導入しているコールセンターも少なくないでしょう。
しかし、「シフト制にしたはずなのに離職率が今ひとつ下がっていない」というお悩みはありませんか。もしそのように感じているコールセンターは、さらに一歩踏み込んだ多様化を目指してください。
現在、コロナ禍を経てテレワーク/在宅ワーク/リモートワークが日常的になり、従来の出社至上主義に関して見直される傾向にあります。コールセンターに関しても例外ではありません。コールセンターに期待する改善点第1位が「在宅勤務にしてほしい」だったことは、まさに時流を表しているのでしょう。
とはいえ、オペレーターの在宅勤務にはメリットもあると同時に、セキュリティ面でのリスクも存在します。ですから、出社派とリモート派でただせめぎ合うのではなく、ハイブリッドコールセンターとして働き方の多様化を図るようにしましょう。
「在宅勤務にしてほしい」という願いには、「楽だから」「通勤が面倒だから」といった理由の他に、「育児や介護をしながら仕事がしたい」のようなワークライフバランスを保つための願いも存在します。出産や育児、介護といった生活の変化による女性のキャリアストップを回避することも可能です。
ハイブリッドコールセンターには、ハイブリッドならではのメリットが存在します
ハイブリッドコールセンターもうやめる?継続すべき理由とは - TPIJ by CBA |
ハイブリッドコールセンターの体制と併せて、産休や育休が取りやすく、職場復帰しやすい環境と雰囲気があれば、女性オペレーターがコールセンターに定着しやすくなり、人材不足の観点からもメリットとなります。ぜひオペレーターのライフステージに柔軟に寄り添える環境を整えてください。
ハイブリッドコールセンターを実現するにあたり、コールセンターの運営サイドと在宅オペレーター自身、そしてお客さまの全員が安心できるように、強固なセキュリティを確保しておくことは必要です。最近では、コールセンターだけでなく在宅コールセンター向けのセキュリティ強化用ソリューションがあります。
▶参考:在宅コールセンター向けのセキュリティ強化用ソリューション
ただオペレーターたちの希望を実現していくだけでなく、コールセンターとしてリスクを十分に回避し、メリットを最大限に活かせる準備を忘れないようにしましょう。
これまでは全員出社を当たり前とし、それによってオペレーターの「公平感」を図ってきたかもしれません。しかし、「公平感」だけではオペレーターたちのニーズを満たすことはできず、離職を予防するという観点ではかえって難しくしてしまう現実があります。
コロナ前の出社至上主義や公平感重視の働き方、「在宅ワークは楽をしたいだけ」という価値観を業界全体で捨てるときが来ているのかもしれません。
2. 身体的・精神的余裕をもてる環境作り
冒頭で挙げた離職理由を大枠でまとめると、基本的には「ストレス」が原因となっていることが分かります。その上、オペレーターが求めているのはお金ではなく余裕です。つまりコールセンターが離職予防を考えるときには、「よりストレスフリーであること」が鍵となります。
たとえば、「覚えることが多い」というストレスに対しては、細かな点まで全てを覚えなくても良い準備をすることで余裕を生み出せます。基本的な対応に関するマニュアルの作成や、コールセンター内でのナレッジ共有、共有されたナレッジがすぐに呼び出せるシステムといった準備があれば、オペレーターが覚えることの多さに圧倒されずに済みます。
コンタクトセンター向けナレッジマネジメントのススメ - TPIJ by CBA |
ただし、準備したマニュアルやナレッジを活用しようとするあまり、かえってオペレーターの作業や操作が複雑化してしまうことには注意してください。一つのオペレーター画面で全操作を完結できることが理想です。
▶参考:オペレーターの使いやすさを追求したコールセンターシステムのUIとは
オペレーターたちの精神的余裕を確保するために、世代間で働き方に関する価値観が変化していることも意識しましょう。特にZ世代に見られる「静かな退職」への見方は、世代間で大きく評価が分かれるところです。
「静かな退職」とは:
定義にはいくらか幅がありますが、主に「組織に在籍しながらも契約通りの仕事だけを淡々と行い、退職したかのように精神的な余裕を持って働くこと」とされます
現在コールセンターでセンター長や人事系に携わっている方は、いわゆる「ハッスルワーカー」(=職場内で誰よりも一番働くことが理想とされる)を経験した働き世代かもしれません。働き方に対して「静かな退職」を選ぶ世代とは相反する価値観をもってきた世代といえます。
どちらの価値観が良い悪いというものではありませんが、「静かな退職」をサボりや甘えとネガティブに捉えるか、ワークライフバランスや自分/家族の時間を大切にしているとポジティブに捉えるかは大切です。時代の傾向上、「静かな退職」を好む人は増えるでしょう。
そのような人材を全て排除または変化させようとすれば、おのずと人材の減少、若手オペレーターのストレス増加、職場内雰囲気の悪化が見込まれます。決して良い結果にはなりません。新しい価値観を受け入れつつ理解を示すことが求められるタイミングです。
働き方に関する新しい価値観と付き合っていく中で、必要があるなら「静かな採用」を検討することは効果的です。
「静かな採用」とは:
Gartner社が2023年に職場で見られるトレンドとして上げた言葉でもあり、主に「企業が実際に正社員を新たに雇用せずに新しいスキルを得ること」と説明しています(正確な定義はまだないようです)。既存社員に現在の職務以上の責任を任せることや、ポジション異動、別のプロジェクトを担当することが含まれます。大きくは社内異動と捉えることができるでしょう。
オペレーターが「静かな退職」を選んでいる理由に、「コールセンター業務が合っていない」「能力を活かしにくい」と感じている場合があるからです。そのようなオペレーターにもっと適切な部署があるのであれば、部署移動を提案することはオペレーターにとっても会社全体にとってもメリットとなります。
現在のコールセンター業務には、電話対応だけでなく、メールやチャットのテキスト対応、VOCの管理などがあります。
ただし、部署移動に関しては、言うまでもなく本人とよくコミュニケーションを取ってください。
ストレスフリーや余裕を掲げすぎて、言わば「冷めた」人材ばかりを抱えるのがコールセンターにとって良いわけではありません。オペレーターたちのモチベーションをコントロールしていくことは必要です。モチベーションを高めるための策は次の項目で紹介します。
「コールセンターの経営貢献がわかってもらえない」はVOCで解決できる!? - TPIJ by CBA |
3. 人事評価の最適化と透明化
コールセンターの離職理由に、「ノルマがきつい、クリアできない」がありました。「ノルマ」というと、「達成しなければいけないもの」「達成できなければペナルティが発生するもの」といったネガティブなイメージが付きものです。
最近ではノルマの代わりに「目標」を設定しているコールセンターも多いようですが、もし今もノルマを採用しているのであれば以下の点をチェックしてみてください。
- ノルマがオペレーターを縛り上げるものになっていないか
- ノルマ達成ができなかった場合に本当にペナルティはないのか
- 今のノルマの内容はオペレーターたちにとって達成可能で現実的か
- ノルマを撤廃することはできないか
これまでの「ノルマ」のイメージでは、「0がマイナスにならないよう努力する」の意味合いが強く、「0を10や20に上げていく」といった向上心やモチベーションに繋がる意味合いがかなり弱くなっています。
努力がプラスの評価に繋がりにくいので、オペレーターが高いモチベーションをもって働き続ける妨げとなり得ます。ノルマまたは目標の達成/未達成は人事評価をする上で有効な数字かもしれませんが、それだけが評価基準の大半を占めることがないようにも注意してください。
人事評価に使える項目としては、以下のようなものがあります。
- 言葉遣いや電話の取り方といったコール品質
- 処理件数や売り上げのような業績
- 勤怠状況
- 業務知識
- 意欲
人事評価には、公平性と透明性が不可欠です。自社のコールセンターではどのような基準で評価され、評価された結果どのようなメリットがあるのかを明らかにしましょう。
人事評価が透明化・最適化されてメリットが明らかになれば、「静かな退職」ではなく「無理をせずに頑張る」オペレーターの増加が期待できます。
人事評価の透明性を図る上で、定期的にオペレーターへフィードバックすることも効果的です。
オペレーターが自分の評価を把握して安心できるだけでなく、知らされた評価をもとにさらに努力することもできるからです。オペレーターの側に努力したい意欲はあっても、何を努力すれば良いのか分からないと、結果として「静かな退職」になってしまう可能性があります。
頑張りたいと思っているオペレーターを見過ごしてしまうのは、人材不足のコールセンターとしては大きな痛手です。フィードバックによって人事評価の透明化を図りながら、定期的にオペレーターとコミュニケーションを取ることができ、オペレーターの意欲を直に見ることもできるなら、まさに良いことづくしではないでしょうか。
適切な人事評価で成功したクレジット会社のコールセンターの事例をご紹介します。
オペレーターのほとんどがパート従業員で、離職率が高いという問題を抱えていました。そこで、オペレーターの能力を「効率」「サービスレベル」「解約回避率」の観点から評価する仕組みを整備しました。評価をもとにパート従業員が昇格できる仕組みも整えました。
結果、SVやASVに昇格できる可能性が出たことでパート従業員のモチベーションが上がったといいます。メリットはモチベーションの向上だけにとどまらず、ノウハウの蓄積にも現れました。短期で異動する正社員に対し、長期で働くパート従業員は多くのノウハウを持っているため、重要なポジションにノウハウを多く持つ人材を採用でき、業務の安定化を図れたようです。
4. コミュニケーションの活性化
一般的にコールセンターはコア事業となりにくく、他部署との関わりも少ない「閉鎖的な部署」になりがちです。オペレーター同士のコミュニケーション活性化と、他部署とのコミュニケーション活性化が必要です。
いずれも、何か問題が発生した際に同僚へ気兼ねなく質問・相談できるといったメリットや、他部署との関わりによって専門的な知識が必要な対応も可能になるといったメリットがあります。
それぞれに効く具体的な例を見てみましょう。
具体例① コールセンター内勉強会
「コールセンター内勉強会」は、オペレーター同士が自分の知識や勉強したことを発表し共有する場です。ナレッジ共有、情報・意見交換、定期的な研修のような役割を果たします。あくまでもオペレーター同士が行うものであり、外部の講師を呼んで…といった大がかりな勉強会ではありません。だからこそコストがかからず定期開催しやすいので、よりフレッシュな情報や意見をヒアリング、蓄積していけます。
具体例② エンジニアとのコミュニケーションラインの確保
テクニカルサポートを提供しているコールセンターの場合、製品に関する専門知識が必要な場面があるでしょう。そのようなときに、普段からエンジニアチームとの関係やコミュニケーションラインを構築できていると、エンジニアから適切なサポートをすぐに受けることが可能です。
必要そうな対応に関してあらかじめ予想し、対応時に使える資料をまとめておくなどできれば、いざという時に応対にまごついてお客さまをお待たせしてしまう心配はありません。
使用しているコールセンターシステムが三者通話に対応しているのであれば、エンジニアに直接サポートに入ってもらうことができます。
▶参考:三者通話に対応しているコールセンターシステム「ブライトパターン」
5. 研修プログラムの整備
離職理由には、「不十分なサポート体制」もありました。当たり前ですが、オペレーターのスタートダッシュがうまく切れなければ、その後に続く業務に難しさを感じることが増え、感情的にも身体的にもうまく仕事をすることができなくなります。
スタートダッシュをいかに早く切れるかより、いかに正確に切れるかを重視するようにしましょう。
具体的には、正しい敬語や丁寧な言葉遣い、口調、印象の良い声のトーンやボリューム、業務における注意事項など、基本的と思えることから体系だった研修を行ってください。電話をかけてくる顧客の年齢層が高いのであれば、シニア対応についてもトレーニングを行っておくと実践的です。
今すぐ強化すべきカスタマーサポートのシニア対応7つのポイント - TPIJ by CBA |
電話対応における基板がしっかりしていれば、必然的に顧客ファーストの対応へと繋がるので、顧客満足度向上やクレームの削減が期待できます。オペレーターの対応にまつわるクレームリスクを下げられるので、回り回ってオペレーター自身のストレスを軽減することが可能です。
新人オペレーターの直接の上司が随時研修をしていく形を取るよりも、コールセンター全体をあげて基本を教え込む方が、オペレーターのストレス低減、離職予防、顧客満足度の向上に繋がります。正確なスタートダッシュが確実に切れれば、すぐにつまずくこともなく、むしろ即戦力として長く勤務してもらいやすくなるのではないでしょうか。
研修には業務端末の操作といった技術面でのサポートも必須です。オペレーター画面の見方や使い方といった操作に関しても、ロールプレイングやOJT(=On the Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の略で、「実際の現場で業務を通じて教育を行う訓練方法」)を行うと、新人オペレーターが安心してオペレーター業務へ入っていくことができます。
研修を行う際には、上司やSVが研修内容をよく把握しておくよう注意してください。「研修で習ったことと指導係が言うことが違う」となると、それがオペレーターの負担や不満へと繋がり、早期退職を促してしまうからです。
研修で使用されるテキストや資料に目を通しておいたり、実際に研修に参加したりして、内容のすりあわせをしておくと良いでしょう。
チャット対応に役立つ11のコツ|現場で必須のマナー・KPIも紹介 - TPIJ by CBA |
6. クレーム対応のマニュアル化とフォロー強化
「コールセンターのオペレーターなんだから、クレームを受けるのは当たり前」と思われるかもしれませんが、実際にクレームを受けるオペレーターのストレスは計り知れません。
実際、離職理由をランキング化(引用:株式会社ビズヒッツによる調査)してみると、ストレスによる離職が圧倒的に多いことが分かります。「クレーム対応をしたオペレーターへのフォローがない」「SVがクレーム対応をサポートしてくれない」といった不満も、短期間での離職へと繋がっています。
クレーム電話を完全に0にすることはできないかもしれません。しかし、発生したクレームに対するオペレーターのストレスを最小限に抑えることは可能です。クレーム対応に関するマニュアルの作成・整備や、クレーム発生時のエスカレーションについて周知しておくなら、突発的なクレームに対してオペレーターが冷静に対応できます。
また、どのポジションのオペレーターであれ、クレーム対応後には必ず休憩を取るようにと取り決めているコールセンターもあります。
オペレーター本人が「ストレスになっていない」と感じていても、実際には少なからず精神的負担がかかっています。日本人はとくに辛いときに「しんどい、辛い」と言えない人が多いことも覚えておきましょう。
クレームに対する許容度は、各オペレーターによってまちまちです。その上で、クレーム対応後に関しては、「少しやり過ぎかも…」と感じるほど手厚いフォローをしましょう。
最近ではカスタマーハラスメントも問題視されています。クレーム対応だけでなく、カスハラ対応に関しても準備を整えてください。何がクレームで何がカスハラなのか、カスハラ発生時にはどんな対応をするのかといった対策やサポート体制に関して、オペレーター全員が把握できるようにします。全オペレーターが「守られている」と感じられる環境で業務を行えることが理想です。
「フォローやオペレーターの保護が手厚すぎる」と感じるオペレーターがすぐに離職することはなくとも、「十分ではない、不足している」と感じたオペレーターが即時離職することはあり得ます。クレームやカスハラに対する対応策やフォロー体制を作り込んでいる方が、離職予防策として効果的です。
カスハラ対応でオペレーターを守る方法7つと改善策3つ - TPIJ by CBA |
7. リスキリングやキャリアアップの積極支援
コールセンターの業務はルーティン業務になりやすいため、他の業種に比べてリスキリングやキャリアアップが難しいと思われがちです。コールセンターの側が、業務に役立つ以下のような資格取得をサポートすると、オペレーターのスキルやモチベーションが向上します。
- コンタクトセンター検定
- 電話対応技能検定
- CSスペシャリスト検定
- MOS試験
- 日商PC検定
コールセンター業務に直接的に役立つ資格を取得した際、明確にオペレーターのメリットとなる条件を提示できていれば、なおモチベーションの維持向上が望めます。例えば、時給/月給のアップや、キャリアアップです。
一般的なコールセンターの組織図は上の画像の通りです。オペレーターからどのような条件でステップアップしていけるのか明文化して実行すると、「キャリアの先行きが見えず不安」と思われているコールセンターの印象を払拭できます。
積極的なキャリアアップを促すためにも、コールセンターごとに存在する基準やフレームでオペレーターたちの業務を縛らないことが重要です。
具体的には、業務の全てをマニュアル化してしまうのは、離職予防の観点では逆効果となり得ます。クレーム対応の項目ではマニュアルの作成を推奨しましたが、業務内容の全てをマニュアル化してしまうと、オペレーターの裁量度が著しく低くなってしまい、モチベーションを低下させてしまうかもしれません。
「類型別に見たコールセンターの離職率の分析」を見ると、業務への裁量度が高いコールセンターの方が離職率が低い傾向にあります。マニュアル化も大切ではありますが、オペレーターの裁量度を可能な限り高くしておくなら、リスキリングやキャリアアップに関してのモチベーションを高く維持できます。
8. 給与の見直し
これまでのコールセンターは、以下の図式で成り立っていました。
「コールセンターは直接売り上げに貢献している部署ではないので、コストを削減しなければいけない」+「顧客接点であるコールセンターには、質の良い人材による質の良い対応が求められる」=「質の良い人材を低コストで採用する」
これら相反する2つの要素のもとに人を雇わなければいけませんでした。
他部署と比べて顧客接点の第一線であることは言うまでもなく、かつ精神的な負担も他部署と比べて高いのがコールセンターの特徴です。つまり、業務内容に対して給与面のバランスが取りにくい業界と言えます。
冒頭でオペレーターが求めているのは「お金よりも余裕」とご紹介しましたが、だからといって給与が低く割に合わなくても良いわけではありません。
今の給与が適正な価格であるかを今一度確認し、必要があれば事前投資として給与アップを実施してください。既存のオペレーターが離職すれば、広告出稿費がかさんだり、他のオペレーターにしわ寄せが行くことによる連続離職が起きたりといったリスクを抱えます。
9. 採用時のミスマッチ防止
最後に、短期離職しそうな人材を雇わないという策をご紹介します。コールセンター業務は、アルバイトやパートの求人も多いためか「電話を取るだけの簡単な仕事」といった印象をもたれたり、「スキルが身につかない仕事」といった認識をされたりします。
そのような意識をもったまま業務に就いてしまうと、最初のモチベーションが低かったり、イメージとのギャップにダメージを受けたりして短期離職する可能性が高まります。
採用面接の段階で間違った認識を一律で正しせるなら、コールセンターとしては早期離職の可能性が高い人材にコストをかける事態を避けられ、就職希望者も無駄なストレスを感じずに済みます。事前のすりあわせができている方が、お互いにとってWin-Winな状態で契約を交わすことができます。
とはいえ、コールセンターには慢性的な人材不足という問題が立ちはだかっています。コールセンター勤務によって身につけられるスキルを対外的にアピールしておくことは、モチベーションの高い人材を確保する点で有効です。
上の表は、コールセンター勤務で身につくスキルについて、実際にオペレーターへアンケートをとった結果です。
ぜひ自社のオペレーターたちにも、同様のアンケートをとってみてください。
人材募集時に、自社で集計したアンケート結果を提供できれば、他でもないあなたのコールセンターに就職するメリットを感じてもらえます。
最後に
離職予防策に関して総括するならば、「従業員満足度」や「従業員幸福度」を最優先に考えることが一番です。全オペレーターの満足度や幸福度を満たすことは現実ではありませんが、少しずつ可能な範囲からオペレーターたちの願いを叶えていければ、おのずとコールセンターでの「居心地」が良くなり、定着率が上がり、離職率が下がっていきます。
私たちは「顧客満足度」の向上だけに重きを置きがちですが、顧客満足の維持・向上をはかるなら、まず従業員満足度・幸福度を高く保つ必要があります。
コールセンタージャパン2023年5月号では、アンケートによる「従業員幸福度」の可視化が推奨されていました。
憶測で離職予防策を講じていくよりも、自社のコールセンターのオペレーターたちが何を求めているのかを直に聞ける方が、最も効果のある離職予防策を講じられます。従業員幸福度が高く、離職率の低いコールセンターを実現しましょう。