サイトアイコン TPIJ by CBA

把握していますか?お客さまが問い合わせてこられる理由。

数多く存在する顧客接点の中でも、コンタクトセンターは、お客さま一人ひとりから生の声を聞くことができるという点で、非常に重要な接点として機能しています。「お客さまの声」には、お客さまが問い合わせてきた理由、つまりコールリーズンも含まれています。

たとえば、「製品について~を知りたい」、「製品が壊れてしまったようだが、無償修理は可能なのか」、「サービスを解約したい」などが当てはまります。そういったコールリーズンを把握することで、自社における問い合わせ傾向の把握、CXの向上・改善、ワークフローの改善などに活かすことができるだけでなく、お客さまの声を反映したコンタクトセンターを構築することができるのです。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

コールリーズンにまつわる問題点

ある海外のCX調査(米国SQMの調査データ)によると、自社におけるCXの最も大きな問題点を特定できると回答したコンタクトセンターは、調査対象の企業の内50%未満でした。調査やアンケートでしばしば耳にするコンタクトセンターに対する不満の第一位は、「問い合わせの内容・理由を、担当者が包括的かつ全体的に把握できていない」ことです。CXの向上には、この「お客さまが問い合わせてこられる理由をしっかりと把握」することが不可欠となります。 

お客さまのコールリーズンを「お客さまの視点から」把握できていないかもしれないというのは、多くのコンタクトセンターが問題点として挙げているポイントです。先述のCX調査では、お客さまのコールリーズンと実際の担当者がタグ付けしたコールリーズンには、大きな食い違いがある場合が多いという結果が報告されています。 

たとえば、「請求関係の問題」(ティア1)とタグ付けされ、「お客さまが請求書の解釈を間違われていた」(ティア2)とタグ付けされた場合を思い浮かべてみてください。お客さま側からすると、「高額な請求書」(ティア1)について問い合わせ、「請求料金の解釈に混乱していた」(ティア2)状態でした。この場合お客さまは、「請求書記載の金額が高額すぎておかしい」として問い合わせた結果、「お客さまは請求金額の解釈が間違っていた」ということが判明しました。担当者がタグ付けた「請求関係の問題」とは異なっています。 

コールリーズンの把握において「ズレ」が生じたまま対応を続けていると、お互いフラストレーションがたまりCXは低下してしまいます。コールリーズンをしっかり正確に把握することは、非常に重要な課題です。 

コールリーズンの把握はなぜ重要か? 

コールリーズンの把握と分析は、業務の効率化、生産性の向上、効果的な顧客対応の実現へ向かう出発点となります。しかしコールリーズンの把握と分析には、それだけにとどまらない可能性を秘めています。 

多くの場合、コールリーズンをより正確かつ全体的に把握することにより、幅広い視野でデータを定量的に取得・収集できます。さらに、コールリーズンを正確に把握することで、CXにおける問題点の発見、問い合わせ傾向の把握、担当者のトレーニングやコーチングの改善、新たなポリシーやプロセスの策定、そして新しい技術の導入につながります。 

また、すべてのお客さまのコールリーズンをしっかり把握することで、その日一日の対応品質やサービスレベル、放棄呼などをリアルタイムでおさえることができるため、必要な措置を迅速に講じることができるようになります。 

コールリーズンの把握とタグ付けは、コールリーズンごとの初回解決率(FCR)を正確に測定できるようになります。

たとえば、上述の調査を実施したSQMのFCR調査データによると、FCRが最も高いのは注文で75%、問い合わせで74%、メンテナンスで71%、請求で68%、クレームで60%、そして最も低いのは苦情対応で47%とのことです。 

多くのコンタクトセンターでは、問い合わせ、メンテナンス、注文における対応は複雑性が低いか中程度であるため、FCRは平均よりも高くなります。一方で請求やクレーム・苦情対応では、対応がより複雑になるためFCRは平均より低くなります。コールリーズン別にFCRを理解することにより、コールリーズンの種類の優先付けをして、CXを向上させられます。 

コールリーズンを把握し、分析するメリットをまとめると以下のとおりになります。 

コールリーズン把握の二大メソッド 

お客さまと問い合わせ担当者双方の視点から、コールリーズンを把握して分析するためのメソッドとヒントをご紹介いたします。各メソッドのメリットとデメリットも含め、施策のヒントとしていただけるかもしれません。 

メソッド1:担当者がコールリーズンを決定して、CRM上でタグ付け 

このメソッドは最も一般的です。お客さまと実際に相対する担当者は、CRMシステム上でコールリーズンおよびタグ付けを実施するのに最もふさわしい立場にいると言えるでしょう。担当者は逆にお客さまに対して質問できるという点にも注目できます。コールリーズンタグは、主なコールリーズンを定量化して正確に把握するのに役立つ一方で、企業の視点に偏ってしまう可能性もあります。偏らずにタグ付けするヒントは以下のとおりです。 

コールリーズンの把握とタグ付けには、トレーニング、コーチング、そしてモニタリングが必要となるため、担当者のコールリーズンの把握とタグ付けパフォーマンスを測定することが大切です。 

コールリーズンのタグ付けには、2階層(ティア)に分ける方法が一般的です。「ティア1」は高レベルのタグで(例:課金)、「ティア2」はより詳細なタグとなります(例:正確性、明確性、頻度など)。多くの場合、ティア1には5-10個のタグがあり、ティア2のタグは10-25個ほどです。2つ以上のコールリーズンで問い合わせてきた場合は、複数のタグが付与されることもあります。 

タグの数はむやみに増やせばよいというものではありません。タグが増え過ぎると、精度に悪影響が及びます。 

感情タグ(例:幸せ、良い、大丈夫、動揺、怒りなど)を付与することで、特定のコールリーズンにおけるCXに関して、より深いインサイトを得ることができる場合があります。 

以前の通話で問題が解決されなかったことが理由で再度お客さまが問い合わせしてこられた場合、お客さまへのコールバックの理由をタグ付けすることも有効です。この場合、コールバックの理由を正確にタグ付けするため、追加トレーニングの実施や、経験を積んだオペレーターが担当するのが望ましいでしょう。 

コールバックのタグ付けにも、高レベルのティア1(例:担当者の電話対応)と、詳細レベルのティア2(例:コールバックしなかった、権限なし、自信がない、失礼である、役に立たない、寄り添いなし、など)が活用されます。 

音声分析AIを利用することで、効率化を図ることもできます。その場合、タグ付けの正確性を検証する人間の担当者をアサインすることが望ましいでしょう。

メリット 

デメリット 

メソッド2:通話後アンケートの実施 

お客さまのコールリーズンを理解するもう一つの強力なツールは、通話後に実施するアンケートです。たとえば、通話後のアンケートでお客さまに問い合わせ理由を尋ね、あらかじめ定義された理由の選択肢から、お客さまに理由を選んでもらえます。実施のヒントは以下のとおりです。 

通話後アンケートを設計するには、「問い合わせ理由を尋ねる質問」と、「実際のコールリーズンの選択肢」を準備する必要があります。別のアプローチとして、自由記述の質問に回答してもらい、担当者が定義済みタグに基づいてコールリーズンをタグ付けしていくという方法もあります。いずれのアプローチを採用する場合も、正確性検証テストを実施する必要があるでしょう。QA担当者を介した通話録音の評価により実施できます。 

メソッド1と同様、メソッド2も2階層で成り立っています(メソッド1参照)。              

メソッド1と2に代わるアプローチとして、QA担当者による通話録音の評価という方法もあります。QA担当者が通話録音を評価してお客さまのコールリーズンを判定し、2階層から成るタグ付けを実施します。 

メリット 

デメリット 

メソッド1とメソッド2では、コールリーズン別の顧客満足度が大きく異なることがあります。したがって、メソッド1と2を併用することでより全体的に、そして正確にコールリーズンを把握することが可能となります。 

お客さまの声を大切に 

コールリーズンの把握は、お客さまの悩みごとやお困りごと、不満を解消し、CX・顧客満足度の向上につながるものです。ひいては自社の顧客対応や顧客接点における問題点を洗い出し、新たな課題を発見することにもつながります。その結果、チャットボットやIVRから対応系・分析系AIなど、新しい技術の導入により問題点が的確に解決され、より一層CXが改善されることになるかもしれません。 

また、適切な部署へのエスカレーションが実施されるようにフローを見直すことで、業務の効率化にもつながります。お客さまは何度も電話やメール、メッセージを繰り返す必要がなくなるのです。 

ただし実現のためには、状況がそれぞれ異なるお客さま一人ひとりの声をしっかりと把握することから始まります。お客さま一人ひとりに向き合うのは、結局のところ自社のオペレーター一人ひとりなのだという事実をしっかりと見据えて、コールリーズンを迅速に把握しつつ、必要な対応を的確に実施していくことがこれからも重要なポイントとなるでしょう。 

モバイルバージョンを終了