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生体認証システムとは?導入メリット・課題とおすすめ製品10選

企業のデジタル化やAI活用が進む中、本人確認の手法は大きな転換期を迎えています。これまで主流だったID・パスワード認証に代わり、身体的特徴や行動パターンを利用する「生体認証(バイオメトリクス認証)」が急速に注目を集めているのです。

この背景には、AIを悪用したサイバー攻撃やなりすまし詐欺の増加と、それに伴うセキュリティ意識の高まりが挙げられます。

とはいえ、生体認証導入のメリットはセキュリティ強化だけではありません。「顧客体験」や「従業員体験」の向上にも寄与することから、多くの業界で導入が進んでいるのです。

一方で、認証方法によって得意・不得意があり、自社に最適な技術を見極めることが重要です。

本記事では、生体認証の基本的な情報に加え、おすすめの生体認証システム10選を紹介します。ぜひ最適なソリューションを見つけるための参考にしてください。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、19年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

【この記事が解決するお悩み】

 

 

生体認証(バイオメトリクス認証)とは

生体認証とは、人間の身体的または行動的な特徴を用いて個人認証する技術のことです。主に、本人の顔・虹彩・耳介・指紋・掌紋・静脈・DNA・声紋・行動を事前にシステムへ登録し、本人が持つ身体的特徴と一致するかどうかを照合することで、本人確認を行います。

多くの人にとって、スマートフォンのロック解除で利用される顔認証や指紋認証が、もっとも身近な例です。

生体認証システムを利用するメリットとは何でしょうか。大きなメリットについて2つ説明します。

高度なセキュリティ

生体認証では、ユーザーがもつ固有の身体的・行動的特徴を利用するので、IDやパスワードによる認証、物理キーによるロック解除などと比較すると、なりすましや偽造への対策に効果的です。

保険・金融業界や行政機関など、より高度なセキュリティが求められる分野で活用が進んでいます。

高い利便性

IDやパスワードによる認証は、ユーザーが情報を記憶・管理し、入力・認証しなければいけないため、比較的手間がかかる方法です。万が一情報を忘れた場合には、再発行手続きが必要となり、手続きの完了までにさらなる手間と時間を要するので、ユーザーの負担となります。

対して生体認証は、認証者本人が触れる/かざす/話す/通過するなどの動作によって認証が完了するので、本人確認における負担が非常に少なく、利便性が高いのが大きなメリットです。

ここからは、国内製品や国内代理店が提供するソリューションを軸として、10種類の生体認証システムを紹介します。ぜひ自社のニーズに合致するソリューション探しの参考にしてください。

1. VoiceDNA

概要:声紋認証ソリューション。初回にユーザーの声を登録するだけで、以降は自然な会話の中で本人確認ができるようになる。AIが自動学習するので、使うほどに認証精度が向上し、多様な話し方や言語にも対応できるようになる。金融・保険業界や、行政機関におすすめの製品。

機能・特徴:
・AIによる自動学習で、使うほどに認証精度が向上
・音声クローンや、なりすましは99.5%の確率で検出。録音済み音声の検出は98.5%
・数ヶ月ごとにLLMが更新されるので、つねに最新の脅威に対応していける
・SNR8db以上の環境で認証可能な高いノイズ耐性
・声紋登録にかかる時間は10秒以内
・アクティブ認証/パッシブ認証のどちらにも対応

導入事例:アジアの大手銀行コールセンターは、顧客急増(月間35万件)により本人確認に60~90秒を要し、効率と満足度の低下、セキュリティの弱さが課題だった。そこで声紋認証「VoiceDNA」を導入。既存システムと統合し、5~7秒での高精度認証を実現。結果、本人確認時間を30~40%削減し、顧客満足度は25%以上向上した。さらに、セキュリティ強化にも成功した。

2. DigitalPersona AD

概要:世界標準のPC認証強化システム

機能・特徴:
・国内の官公庁をはじめ、大企業にも採用され、10万人以上のユーザーに利用されている
・顔・指紋利用した生体認証だけでなく、ICカード認証、スマートフォン認証を選択できるので、ニーズに応じて活用できる
・最小25ライセンスから利用可能

導入事例:四国電気保安協会 https://www.digitalpersona.jp/shikok/
PCの起動時とグループウェアへのログインに際して、約500人が指紋認証を利用。メールやスケジュール管理、伝言板等の機能をカバーしているグループウェアに、シングルサインオンで利用できるのは大きなメリットになっている。当初は、指紋登録に抵抗を示す職員もいたものの、導入の意図やメリットの説明後は、一人の例外なく指紋認証を利用することになった。

3. DigitalPersona SDK

概要:指紋認証に特化した生体認証システムで、専用のソフトウェアと指紋リーダーを同時提供している

機能・特徴:
・指紋リーダー(DigitalPersona 4500)が高性能で、乾燥した指にも強く、360度どこからでも認証可能で、登録時の指の置き方を再現しなくても認証可能
・日本語サポートの追加オプションが提供されている

4. SmartSESAME PCログオン

概要:多要素・二要素認証でPCセキュリティを強化するシステム

機能・特徴:
・顔・指紋・指静脈・ICカードの認証方式に対応
・AI顔認証はマスク着用者にも対応できる
・勤怠管理とシングルサインオンがオプションとして提供されている
・ICカードには既存の社員証を利用可能

導入事例:京都府庁 https://sesame.cec-ltd.co.jp/cases/19.html
セキュリティ強化のためにICカードを使った二要素認証を導入しつつ、重要な個人情報を扱う職員以外はICカード認証を不要にした。これにより、全職員の利便性にも配慮した柔軟なシステムを構築。

5. Bio-Idiom

概要:NECが手がける生体認証に関する6つの技術を用いた生体認証ブランド

機能・特徴:
・顔、虹彩、指紋・掌紋、指静脈、声、耳音響の6つに対応。なかでも顔、指紋、虹彩は、世界第一位の認証精度を有するとの評価を得ている
・いずれも世界トップクラスまたはNEC独自の技術で、顔認証はクラウドとオンプレミスの両方で提供されている
・マルチモーダル生体認証に対応

導入事例:米国ロサンゼルス郡保安局 https://jpn.nec.com/techrep/journal/g18/n02/180203.html
指紋、掌紋、顔、虹彩認証など、複数の生体認証技術を組み合わせたマルチモーダルの犯罪捜査システムを提供。システムの導入からわずか1週間で、迷宮入り未解決事件の手掛かりを発見するなど、事件解決に向け、大きく貢献した。

6. CloudGate UNO

概要:SSO(シングルサインオン)/MFA(多要素認証)/ID管理を統合提供するプラットフォーム

機能・特徴:
・クラウドサービス多数(Microsoft 365/Google Workspaceなど)へのログインをシングルサインオンで対応
・従来のパスワード認証に加え、パスワード+他の認証要素や、パスワードレス認証など、ニーズに応じて認証方式を選択できる
・アクセス制限、プロビジョニング機能、パスキー対応の多要素認証など、豊富な機能が標準搭載
・専用の認証アプリ「Pocket CloudGate」が提供されている

導入事例:株式会社M&A総合研究所 https://www.cloudgate.jp/casestudy/ma-research-institute
ログインに専用の認証アプリ「Pocket CloudGate」を利用し、生体認証とデバイス証明書による端末制限を採用。

7. VisionPass

概要:IDEMIA社が提供する非接触顔認証機の最新機種

機能・特徴:
・通常のカメラ/3Dセンサー/赤外線および可視光カメラを搭載しており、高度な画像処理技術により、顔側面からの認証やなりすまし防止を実現
・1秒以下の高速認証を実行
・非接触型カードリーダも搭載していて、カード認証との組み合わせも可能
・1.2〜2mの身長を識別するので、顔の位置調整は不要。車椅子利用者もそのまま認証が可能

8. FreeiD

概要:顔認証の機能に特化した生体認証システム

機能・特徴:
・アプリケーションから一度顔の登録をするだけで、複数の顔認証エンジンを利用できる
・マンションやオフィス、保育園、テーマパーク、ゴルフ場、商業施設など、あらゆる施設での利用に最適

実証実験:愛知県主催、「イオンモール常滑」協力 https://freeid.dxyz.co.jp/works/works-3121/
愛知県主催の実証実験として、イオンモール常滑に顔認証決済「FreeiD Pay」を導入。イオンカードと連携し、利用者は財布やスマートフォンを取り出すことなく「手ぶら」で決済が可能となる。期間中は20%オフのキャンペーンも実施され、新しい顧客体験の提供と地域のキャッシュレス化推進に貢献した。

9. docomo business RINK IDaaS

概要:NTTドコモビジネス株式会社が提供している生体認証システム。ID・パスワード管理、シングルサインオン、認証強化、ID連携により、業務にまつわるIDを一元管理できるクラウド型のID・アクセス管理サービス

機能・特徴:
・SIEM(Security Information and Event Management)システムと連携可能
・すべての機能をワンプラン1ID 月額300円(税込330円)で提供
・1契約あたり30IDから導入可能で、スモールスタートが実現

10. Capy FIDO生体認証

概要:Capy株式会社が提供している生体認証システムで、国際標準規格に則って生体認証を行える。

機能・特徴:
・FIDOの認証を取得
・モバイル端末での生体認証に対応。Capy株式会社が開発した「Secure Pass」というスマートフォンアプリケーションが提供されている
・JavaScriptの設置やAPIを組み込むだけで、今運用しているWebサイトに簡単に導入

導入事例:株式会社ジャックス https://corp.capy.me/ja/press_release/jaccs
株式会社ジャックスは、公式スマホアプリ「JACCSアプリ」にCapy株式会社の「生体認証ソリューション」を採用。この導入により、利用者はID・パスワードの入力が不要となり、スマートフォンに登録済みの生体認証でログインが可能となる。

ここまでで、おすすめの生体認証システムを10種類紹介しました。

生体認証には、顔・指紋・声など、さまざまな方式があります。いずれもID/パスワードによる従来の認証方法に比べて、高い精度とセキュリティ強度を実現できる点が、企業や組織にとっての大きな強みです。

一方で、生体認証には「身体的変化の影響を受けやすい」という課題もあります。

たとえば、指紋や顔は、ケガ・加齢・病気・乾燥などの要因により、認証が通りにくくなるケースがあります。導入の目的がセキュリティ強化であっても、これにより顧客体験や従業員体験が損なわれてしまっては本末転倒です。

その点、声紋認証は非接触で認証が完了するため衛生的であり、感染症対策にも有効です。また、手荒れや怪我、マスクの着用といった一時的な身体的変化の影響を受けにくく、他の生体認証が抱える課題を補うアプローチとなります。

また、音声ベースで認証が完結するため、コールセンター業務との親和性が非常に高いのも大きな特徴です。通話の中で自然に本人確認が行えることで、オペレータの負担軽減と顧客体験の向上を同時に実現できます。

生体認証技術は日々進化を続けており、業務プロセスの効率化やセキュリティ強化に直結する手段として、多くの企業が導入を進めています。なかでも、非接触かつ自然な本人確認を実現できる声紋認証は、コールセンターなど音声を扱う業務との親和性が高く、近年注目を集めています。

一方で、生体認証には顔・指紋・静脈・虹彩など多様な方式があり、求めるセキュリティレベルや利用シーンによって最適解は異なります。導入にあたっては、システムの特性だけでなく、利用シーンや顧客体験への影響も踏まえた総合的な検討が不可欠です。

自社の業務特性と親和性の高い認証方法を選ぶことこそが、セキュリティと利便性を両立するための第一歩となるでしょう。


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