お客様とのつながりを大切にする。言葉でいうのは簡単でもコールセンターを含むカスタマーサービス全体で実施するのは難しいものです。ティーライフ株式会社は電話、LINE、手紙などオンラインとオフラインの顧客接点において「お客様とのつながりを大切にする」取り組みを実施しています。
同社の施策について詳しくコミュニケーション部・部長 青木真氏に伺いました。
青木 真氏プロフィール
ティーライフ株式会社コミュニケーション部 部長。入社19年目。販売部門、マーケティング部門で実績を積み、3年前からコールセンターを管轄するコミュニケーション部・部長としてカスタマーサービス全体を統括。
【ウェビナー書き起こし】秋山紀郎氏に聞く「デジタルチャネル活用-成功の秘訣」 - TPIJ by CBA |
ティーライフ株式会社ってどんな会社?
-ティーライフとはどのような会社なのか教えてください。
当社は今年の8月で創業40周年となります。もともと代表がお茶家の生まれで、自分でも起業しようと思いティーライフを立ち上げました。
最初はティーバッグの加工を行っていましたが、他社との差別化をしないと勝ち抜けないと感じたようです。そこでお茶のルーツがある中国雲南省のプーアール茶に目を付けました。
プーアール茶はそのままだとクセがあるので飲みづらいのですが、日本人の口に合うように、蒸気で殺菌するという手法を採用したところ、マイルドで飲みやすい味に仕上がりました。
お客様にも好評で、通信販売一本でやっていけるようになりました。そこから健康や美容などのお悩みにこたえられるものを、お茶を中心にサポートすることが事業の中心になっていきました。
-オフィスの入り口に手書きの手紙がいっぱいありました。やはりメールより手書きでお客様の声を送ってこられる方が多いですか。
注文書にメッセージ欄があり、お客様はそこにひとこと書いてくださいます。
お客様のメッセージに対して私たちは一通一通、手書きで返信しています。コミュニケーション部の専任部隊がお客様のお手紙の内容とご購入履歴を見ながら、返信をはがき一枚に書いていきます。大体一日50通くらいになります。
おそらく返事を期待して書いているお客様はあまりいないと思います。でもそこに「感動を与えたい」という想いで取り組んでいます。私自身、先代の代表から「大きい会社と戦うには、小さい会社なりにお客様とつながっていくことが大切」ということを入社のときから叩き込まれました。
手書きで返信は一見コストだと思われがちです。でもそれが当社の強みであるととらえています。そこだけは変えずに続けていこうと思っています。
元マーケターが取り組むコールセンター管理
-コールセンター部門を管理されて何年ですか。
3年半になります。当社のコールセンター部門長は入れ替わりが多く、3年でも長いほうなんです。以前は1年~2年で、部長や課長が変わってしまうことがありました。
そうすると日々のルーティンに追われてしまい、センター内の業務がどのように行われているか、システムの詳細、KPI、コールフローなどの概念をきちんと学ぶ機会がなかなか持てません。やっとノウハウがわかってきたな、というくらいで異動になることが多いです。ですから、コールセンターの管理に取り組むのであれば、最低3年ぐらいは担当させてほしいと感じます。
-元マーケターの方がコールセンターを管理するという会社の取り組みはユニークに感じます。
以前から現場のことを知らないといけないと感じていて、会社には伝えていました。コールセンターに来るとマーケティング部門にいたため、数値を見る習慣があり、いろいろと気になることが多かったです。
「この数値はどういう意味?」「こっちとあっちの数値の違いは何?」という感じです。普通はカスタムで作ったレポートしか管理者は触らないと思うのですが、私は全部知りたくなってしまいます。
ブライトパターンの英語で書かれている「エージェントアクティビティ」などの数値の部分も気になってしまうんですよね(笑)。LINEの設定画面もいろいろ見ていたらアイデアが出てきて、御社の力を借りながら施策を練らせていただいています。
まだまだ多い電話での問い合わせ
-現在、コールセンターの規模はどれくらいですか。
コミュニケーターの数は20名ほどです。シフト制なので実際に業務にあたる数は12~13名です。
-一日の問い合わせ件数はどれくらいですか。
当社は電話、メール、LINEで問い合わせを受け付けています。電話の件数は一日150~200件くらいです。
アウトソースしている件数を含めると平均350件、多いときで600件ほどになります。メールが大体一日15通、LINEが20件です。
-最近は電話をかけない人が増えていると聞きますが、比率的には高いと感じます。
昔からご利用いただいているお客様が多く、当社を利用し始めた時は40代後半くらいだった方が、10年以上たって60代になっておられるという流れがあると思います。
「早く会話を終わらせて次の電話を取れ」ではなく、会話を広げる応対
-最近、いろいろな通販系のコールセンターから聞く点なのですが、「以前は一件の通話時間を短くする傾向だったが、今は通話時間の指標が長くなっている」とのことです。つまり、「通話は長いほどいい」という傾向ととらえられます。通話時間についてティーライフ様ではどのように考えておられますか。
私たちも同じです。「早く会話を終わらせて次の電話を取れ」という方針にはしていません。しっかりお客様のご要望を理解して、一つ一つ丁寧に案内することを心掛けるようにしています。
お客様がおっしゃったことをただ聞くのではなく、こちらから会話を少しだけ広げることを意識しています。ちょっとした会話から「だったらこういう商品がいいですよ」みたいに話がつながることもあります。
-そうは言っても、対応時間で気を付けていることはありますか。
保留でお客様を待たせてしまう対応や、アフターフォローの業務を減らせるようにしています。ただ対応時間の目標を決めるようなことはしていません。今はボイスボットや自動化の流れがあるので、人じゃないとできないことをしっかり有人対応でやるようにしています。
コミュニケーター全員が一丸となって応対品質を向上させる「ミッションとバリュー」
-コールセンター運営の顧客接点で大切にしていることは何ですか。
目の前のお客様のことをしっかり大切にすること、一人一人丁寧に応対するということです。
-しかし、実際はどうでしたか。
3年前にコミュニケーション部の部門長として移動してきたとき、社員やパートさんに「何を大事にして仕事していますか」「ティーライフらしい応対って何ですか」と質問しました。すると、大枠は同じ方向なのですが、バッチリそろっているわけでもありませんでした。
当時のコールセンターに対する会社の方針は「応対品質の向上」でした。しかし応対品質を上げるには、センターとして目指す方向性が固まっていないといけないと思いました。
明確な方針をもとに、応対品質をチェックしていかなければいけません。「正しい言葉遣いができているか」だけだと、良い応対かどうかは判断できないと思いました。
-どのように対応したのでしょうか。
4,5人くらいの中心メンバーをまず集めました。そして「センターのミッションとバリューを決めよう」という話をしました。お客様、会社、コミュニケーターへのミッションを検討、協議しました。
具体的に次のことを決めていきました。
「お客様へのミッション」とは、「ティーライフの顔」としてお客様を笑顔で出迎えること、「家族とか恋人に接するような温かさ」で接すること。お茶で体が健康になってもらうことはもちろんですが、私たちの応対でお客様に心も健やかになってもらうという想いを込めました。
「会社へのミッション」は、「お客様の声をしっかり届ける」ということです。お客様の声は会社にとって財産です。そこからいろいろな改善をしていけます。ですから些細なことも含めてしっかりお客様の声を会社に届け、今ある商品の改善や新商品を生み出すきっかけにしたいと思っています。
最後は「コミュニケーターへのミッション」です。「自分たちの生活を心から豊かにするために笑顔を忘れないスペシャリストになろう」というものにしました。仕事だけではなく、人生を豊かにしてほしいとの願いが込められています。
-ミッションに対して、バリューはどのように決めていかれましたか。
アルファベットのCから始まる3つのバリューを設定しました。一つがコミュニケーション(Communication)、二つ目がカラー(Color)、三つ目がクリエイト(Create)です。
「コミュニケーション」にはお客様だけでなく、仲間やほかの部署の人とのコミュニケーションが含まれます。しっかり相手の話を聞くこと、相手が何を望んでいるかをよく考えましょうという想いです。心を込めて対応することや、お客様や仲間と話すときに必ず感謝の気持ちをもって接しましょう、という想いからコミュニケーションを掲げました。
二つ目の「カラー」は、自分の色を出しましょう、個性を大事にしましょうということです。当然、チームとしてまとまることは大前提ですが、みんな均一な対応ではなく、お客様にできることを自分なりに考えてやっていきましょうという想いで掲げました。
個性を大事にするためには、チームとして協力することが大切になってきます。たとえばチームの中には、さまざまな働き方をしている仲間がいます。お母さん社員で子供がまだ小さいために時短勤務をしている方たちがいます。
いろいろな仕事が残っていてもお互い早く帰れるように、残った仕事を巻き取っていきましょうという感じで協力し合っています。子供がインフルエンザや風邪をひいたために、テレワークになる社員もいます。テレワークだとできない仕事が出てくるのですが、それを出社している社員で巻き取ることもしています。
一見当たり前のことなのですが、「困ったときはお互い様」の気持ちで、思いやりや感謝の気持ちで仕事をすること目指しています。
最後は「クリエイティブ」です。「創造=成長」というイメージです。仕事を通じ、コミュニケーターとして、社会人として、人間として成長していきましょうという想いを込めています。
当社にはユニークなサービスがあったり、販促も多岐にわたるため、覚えることが数多くあります。覚えるのは大変ですが、お客様に正確なご案内ができるよう、その知識を深めていってほしいと思っています。
さらに、「お客様にこんな風に話したらうまくいった」という経験を積極的に共有してほしいとも思っています。逆に困っていることも共有して業務を改善していき、個人としても組織としても成長していきたいと考えています。
お客様目線で実施する「金券引き取りサービス」
当社のサービスで一番人気なのが「百貨店の商品券や、切手、書き損じの年賀状で買い物ができる」というものです。63円の切手を送っていただけたら、63円お値引きしますという内容です。さらに、テレホンカードや図書カード、ビール券など、金券ショップで換金できるものは基本受け付けています。
これらのプロモーションは仕組みづくりがとても大変です。在庫管理、システム管理、仕分けする体制などの構築が必要になりますが、それができるのはティーライフならではだと思っています。
-「金券引き取りサービス」の取り組みはどうやって生まれたのですか。
20年以上前は、買い物をするお店が近くにない方が、通信販売を利用することが多くありました。そのようなお客様が、お中元やお歳暮でビール券や百貨店の商品券をもらっても、近くにお店がないのでなかなか使い道がありません。
それなら「通販で使えるようにしよう」という先代の社長の発想です。そこから今に至ります。
LINEの「コミュニティ」を盛り上げるには社員は極力入らない
-最近の顧客接点でトレンドになっている「コミュニティ」について伺いたいと思います。コミュニティが盛り上がっているという流れはありますか。たとえばLINEのグループチャットとかいかがですか。
「お客様と積極的に接点を持ちたいね」という話は以前からありました。しかし、ただ売るためのアウトバウンドは、結果的にお客様が離れてしまうので当社では積極的に行っておりません。
そこで実施したのが、当社の従業員とお客様が一緒に産後ダイエットをする取り組みです。3か月間LINEチャットでつながって、お互いに報告し合いながら、励まし合いながらダイエットをするというチャレンジ企画を実施しました。
面白いと思ったのは、お客様同士で「ダイエットに役立つティーライフの商品」を紹介し合って盛り上がっていたことです。逆に、その会話に社員が入ってしまうと、チャットが急にと切れてしまいます。
そこから学んだのは、お客様同士で会話が盛り上がっているところには、会社はできるだけ入らないということです。
―これからコールセンターで進めていきたい取り組みはありますか。
いまは音声通話のテキスト化ができていません。これからはテキスト化とコールリーズンの分析に取り組んでいきます。
その内容をもとに、ウェブサイトのFAQページの改善に取り組んでいきます。それにより、お客様は電話しなくても、メールで問い合わせしなくても、ウェブサイト上で自分で解決でき、さらなる顧客満足度向上につながると考えています。