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米国の学校から学ぶ|リスクマネジメント・クライシスマネジメントが必要な3つの分野

リスクマネジメント

Group of children with rucksacks standing in the park near the school. Concept of elementary studying and friendship.

近年、学校でリスクマネジメント・クライシスマネジメントの必要性が高まっています。不審者の侵入、自然災害の発生、いじめの問題が深刻化しているからです。

子どもたちが安全な学校生活を送れるようにするため何ができるでしょうか。
米国で実践されているリスクマネジメントとクライシスマネジメントについて解説していきます。特に危機管理が必要な3つの分野に注目します。

最後には、リスクマネジメント・クライシスマネジメントに役立つ無料と有料のツールを紹介するので参考にしてください。

リスクマネジメントとは 

最初にリスクマネジメントとは何かについて確認しておきます。リスクマネジメントとは、学校内で起こる危険について予測し、防止することです。完全に防止することはできなくても、被害を可能な限り小さくするために対策することを意味します。

たとえば定期的な避難訓練、教職員のトレーニング、生徒への安全教育などが含まれます。最近は危機管理サービスの導入もリスクマネジメントに含まれるようになっています。

クライシスマネジメントとは 

クライシスマネジメントとは問題が発生したときの対応、発生後の対応をあらかじめ決めておくことです。

たとえば校内での情報共有の仕組みづくり、保護者や自宅学習をしている生徒との連絡網システム作成、トラブル発生後のメンタルヘルスケア、再発防止策の用意などが含まれます。

米国の学校から学ぶ|緊急時のリスクマネジメント・クライシスマネジメント

米国では以前から緊急時(自然災害、火災、事故、侵入者)のリスクマネジメント・クライシスマネジメントを行なってきました。具体的に何を行なっているのか、上手に運用していくには何が必要なのか検証しましょう。

緊急時のリスクマネジメント・クライシスマネジメントに必要なポイント4つ 

テキサス・スクール・セーフティセンターでは緊急時に起こすべき行動をシンプルにまとめています。インシデントが起きたときには、あらかじめ策定されている「5つのアクション」からひとつを選ぶだけです。下記のポスターが校内のいたる所に貼られています。

「5つのアクション」―1.緊急時に廊下に出ない、2.校舎のドアをロックする、3.
教室内にとどまる、4.安全な場所へ避難する、5.シェルターへ行く

上記は緊急時の行動を明確にしているクライシスマネジメントの一部です。実際にはクライシスマネジメントに加え、リスクマネジメントも行なっていかなければなりません。

リスクマネジメント・クライシスマネジメントの両方を行ううえで重要なのは4つの点です。

  1. 情報収集
  2. 評価
  3. 対応
  4. 回復

具体的に何をしたらよいのでしょうか。

1. 情報収集

インシデント発生時に素早い行動を取れるようにするには、潜在的な危険を前もって把握することが大切です。とくに不審者やいじめの情報は、ある程度前もって把握することが可能です。
「最近学校の周りで怪しい人を見た」「友人の親戚が学校に恨みを持っている」「誰々がいじめられている」などの情報を生徒から集めることが大切です。
米国では全国51%の学校が、匿名で情報提供ができる窓口(Tip Line)を設けています。

https://www.rti.org/publication/tip-lines-school-safety/fulltext.pdf

そのうち77%は提供された情報を機密扱いにして厳重に管理しています。

77%の学校が、提供された匿名情報は機密扱いにしてる

生徒は匿名で投稿できること、投稿した情報が機密扱いになることを知ると安心して窓口を利用します。さまざまな研究によると生徒は匿名であれば安心感を持って問題を報告すると実証されています。

生徒のための窓口(Tip Line)として利用されているのは、学校独自のオンラインプラットフォーム、チャット、Eメール、危機管理システムです。

2. 評価

次に必要なのは提供された情報を評価することです。提供された情報の信頼性、脅威の大きさを評価しなければなりません。
評価する際には、学校内の安全対策チームが情報の精査を実行します。続いて、重要な情報と判断されたものは、他の教師、保護者、学校かかりつけの心理学者たちと共有されます。

情報の評価で大切なポイントは、多くの人が情報に触れること、生徒の守秘義務が守られることです。

扱う情報を評価するときに、脅威の判断が一定になるよう脅威評価ツールを使用している学校が多く見られます。ツールで表示されるダッシュボードを見ながら脅威の程度を判断し、評価の精度をあげていくのです。

3. 対応

実際にトラブルが発生した際の対応計画を作成しましょう。対応計画は、自然災害、火災、事故、侵入者などいろいろな問題に対応できるよう、シンプルで行動が明確になっているものを用意してください。テキサス・スクール・セーフティセンターの「5つのアクション」を参考にできます。

対応計画は一度作成したら終わりではありません。最新のデータ、研究に基づいて調整してください。PDCAサイクルを回しながらより良い計画を作っていきます。

4. 回復

インシデントは生徒や教師に大きな影響を与えます。数日、数カ月、もしくは数年に渡って悪影響を与えるかもしれません。

回復に向けてどのようなリソースを活用すべきか検討しておきましょう。地域のカウンセラー、心理学者、教育関係者とともに回復計画を策定しておけます。

「情報収集」から「回復」まですべてのプロセスを総合的に管理できる危機管理システムを活用することもできます。

緊急時に教師のミスを防ぐ2つのコツ 

緊急時に教師が適切な行動を取るのは簡単ではありません。なぜなら教師たちは危機管理のトレーニングを受けるものの、時間が経つと学んだ内容を忘れてしまうからです。「多くの人はトレーニングで学んだことの70%を1日で忘れる」との研究があります。
緊急時の対応のために500ページを超えるマニュアルを手渡される学校もあるようです。複雑で細かなマニュアルを覚えて実行するのは不可能です。
インシデントが発生したときに分泌されるアドレナリンも教師の判断を鈍らせます。

教師が緊急時に失敗しないために2つのコツがあります。

  1. シンプルなマニュアル
  2. 危機管理システムの導入

マニュアルはシンプルでわかりやすいものにしてください。テキサス・スクール・セーフティセンターは、インシデントの際に取るべき行動を「5つのアクション」だけに分類しています。
どの災害時にどのパターンを選ぶか教師たちが理解していれば、すぐに適切な行動を取れるでしょう。

危機管理システムを導入することも教師たちのミスを防ぐコツです。インシデントが発生したとき、危機管理システムが教師たちに取るべき行動を知らせてくれます。

実際にテキサスの学校で使用されているCrisisGoという危機管理アプリを例にとって考えます。
テキサス・スクール・セーフティセンターの「5つのアクション」とCrisisGoを提携させると、緊急時に選ぶアクションによってアプリが適切な対応を自動的にしてくれます。

「1.緊急時に廊下に出ない」を選ぶ
→アプリが各生徒のスマートフォンへ教室にとどまるよう指示           

「2.校舎のドアをロックする」を選ぶ
→ 911へ自動的に連絡。救急隊の到着はシステムの利用によって通常より80%早くなった。

「3.教室内にとどまる」を選ぶ
→ アプリ内のパニックボタン押下により、校内の全員が教室内へすぐに入る     

「4.安全な場所へ避難する」を選ぶ
→ CrisisGoの指示で校内の全員がどこへ避難すべきかわかる。アプリのQRコードによって避難所へ全員が避難したか確認できる

「5.シェルターへ行く」を選ぶ
→ シェルターへの避難手順が各自のスマートフォンに表示される          

緊急時に教師のミスを防ぐには、「危機管理システム」と「シンプルなマニュアル」が役立ちます。

米国の学校から学ぶ|コロナ渦のリスクマネジメント・クライシスマネジメント

コロナ渦で安全に学校生活を継続するために、リスクマネジメント・クライシスマネジメントが必要です。効果的な対応策を作ろうと米国の学校では何をしているのでしょうか。

コロナ渦で保護者と教師に安心感を与える3つ方法

コロナ渦では子供を学校へ送り出す親と、校内の安全を守る教師にストレスがかかります。
シカゴでは、保護者と教師に安心感を与える「リスクマネジメント・クライシスマネジメント」を策定するため3つの方法が取られました。

  1. わかりやすい手順
  2. 全員参加
  3. 地域データの活用

各方法について説明します。

1. わかりやすい手順

リスクマネジメントは毎日行うものなので、わかりやすい手順でなければなりません。学校関係者だけでなく、保護者も理解して実行できる手順であるほど実施率が高まります

いくつかの学校は危機管理アプリを使って、毎日のスクリーニング調査を行っています。生徒は学校へ行く前に危機管理アプリへ健康状態と体温を入力すればよいだけです。
問題がなければアプリが学校へ入館できるようGOサインを出します。注意したいのは、健康状態をチェックする質問はシンプルにするということです。

保護者へのトレーニングビデオを用意することもできます。

2. 全員参加

リスクマネジメントは全員参加でなければなりません。学校には教師や生徒以外にさまざまな訪問者が出入りします。臨時講師、業者、保護者などです。
リスクマネジメントを策定する場合には、可能な限り部外者が校内へ入り込まないよう管理してください。

ある学校では、関係者以外が構内に入るときには、危機管理アプリを使ってスクリーニングをし、安全を確認できるようにしています。
アプリには校内に入った時間と出た時間が記録されます。ログが残るので健康被害が出たあとのクライシスマネジメントの際に、人の出入りを簡単に追跡することが可能です。

オープンキャンパスを採用している高校や大学は、「全員参加」のリスクマネジメントを難しく感じています。ランチの際に生徒たちの出入りが頻繁にありますし、校内でも学生会館、図書館、アートセンターなど生徒たちはさまざまな時間に違う場所へ移動するからです。

ニューヨーク州ハリソン中央学区では、この課題を解決するためにCrisisGoを活用しました。校内の各エリアにQRコードを設置し、生徒はエリアを移動するたびにアプリでQRコードをスキャンするのです。
結果として、各生徒の行動を追跡することが容易になりました。

3. 地域データの活用

生徒が住んでいる地域の健康データを活用することもリスクマネジメントでは重要です。感染者が増加している地域に住んでいる生徒がいれば潜在的なリスクがあるので、該当する生徒だけオンライン授業へ切り替える必要があるかもしれません。

危機管理アプリを地域の保健当局や自治体の情報と連携させることで、パンデミックが悪化している地域、該当する生徒の特定が簡単に行なえます。

米国の学校から学ぶ|子供のいじめ・メンタルヘルスに関するリスクマネジメント 

米国ではパンデミック前からいじめの問題が深刻化していました。しかしパンデミック後はより悪化しています。学校関係者はいじめの問題が長期化することを懸念しています。

なぜいじめの問題が長引いているのでしょうか。ひとつの理由は、子供がいじめについて報告したがらないことです。
多くの調査によると、子供は親や学校の先生、そして仲間にさえ、批判や仕返しを恐れて報告したがりません。結果としていじめは解決されず、メンタルヘルスに悪影響が出てくるのです。

全国の学校では問題を解決するために、匿名の通報窓口を設けています。学生用の危機管理アプリをリスクマネジメントの一環として使用しているのです。危機管理アプリに自分や友人が巻き込まれたいじめについて匿名で報告できます。

報告された情報は安全に管理され、校内や郊外の複数の管理チームで分析することが可能です。収集したデータを基に子どもたちのメンタルヘルスをサポートしていけます。

米国の学校で使用されている危機管理アプリには、どのような特徴があるのでしょうか。

「いじめの事実」と「いじめの位置情報」をすぐに報告できる

いじめを早期発見したり、メンタルヘルスの状態を定点観測したりするために危機管理アプリを活用する学校が増えています。

国内の学校におけるリスクマネジメント・クライシスマネジメントを実施する

米国ではリスクマネジメント・クライシスマネジメントのためにシンプルなマニュアル、危機管理システムなどの導入を進めています。
日本でもさまざまなインシデントに対する対策を行っていきたいと思われることでしょう。
しかし「シンプルなマニュアルをどう作ったらよいのだろう」「予算に限りがある中で危機管理システムをどう作れるか」と感じるかもしれません。
国内の事情に合わせたリスクマネジメント・クライシスマネジメントを行なっていくために役立つ情報を紹介します。

シンプルなマニュアル作成

マニュアルを作成するときには、各自治体の防災情報を参考にします。しかし複雑すぎないようにしてください。
本当に重要なステップだけにフォーカスし、覚えやすい内容にしてください。発生する可能性があるインシデントごとに行動をパターン化しましょう。

テキサス・スクール・セーフティセンターでは、校内に貼るポスターはシンプルにしています。しかし保護者向けには詳しい内容を用意しています。

保護者にも安全教育をしていかなければならない

作成したマニュアルは生徒と保護者のニーズに合わせ、複数の言語で用意するようにしてください。

東京都防災ホームページでダウンロードできる「災害時の児童生徒の安否確認ハンドブック」「記入式マニュアル」も参考になります。

無料で構築できる危機管理システム

予算に限りがある場合は、以下のツールを活用して無料で危機管理システムを構築できます。

静岡県総合教育センターの「学校管理外の安否確認手段に関する研究」では上記のツールについて以下のように述べられています。

「Googleフォームは、無料でかつアクセス面での不安が少なく、また、自分の携帯電話が使用できない場合でも、QRコードなどを読み込むことで他人の携帯電話から回答できる。さらに、Google社は全世界の約1割のサーバを保有しており、東日本大震災の際も正常に機能していたため、大規模災害時においても、Googleフォームは使用できる可能性が高い。」

学校管理外の安否確認手段に関する研究

Google Classroomについて詳しく知りたい場合は、https://www.dsk-cloud.com/blog/what-is-google-classroomをご覧ください。
Googleフォームについては、https://www.google.com/intl/ja/forms/about/が参考になります。

有料の学校向け危機管理システム

有料の危機管理システムについて紹介します。

アンピック

https://www.anpic.jp/school/

アンピックは、メンテナンスフリーで使用できる安否確認システムです。災害時や緊急時に生徒たちが安否を確認するために役立ちます。LINEで通知を受け取れる設定が便利です。

トヨクモ安否確認サービス2

https://anpi.toyokumo.co.jp/

トヨクモ安否確認サービス2は、「使いやすい」「大災害でも稼働するシステム設計」という2つの特徴があります。スマートフォン以外にも、ガラケーに対応している危機管理システムです。

CrisisGo

https://cba-japan.com/crisisgo/

CrisisGoは安否確認だけでなく、緊急事態が発生する前の対策もできる危機管理アプリです。リスクマネジメントとクライシスマネジメントの両方に対応しています。

自然災害に加え、パンデミック、いじめ、メンタルヘルス対策も同時に行えるツールです。これまで米国の幼稚園から高校に導入され、2019年だけで400種類を超える校内の問題を未然に防ぎました。

CrisisGoは簡単に使えます。「難しすぎて生徒や保護者が使いこなせない」という問題が起きません。
米国では導入した学校で、486,000件のアラートと4,800万件を超える重要なメッセージがCrisisGoから送信されました。頻繁に使われているツールであることがわかります。

災害時だけでなく、毎日の生徒の行動を教師と保護者が把握するのにも役立ちます。

スマートフォンを持っていない子供でも利用できるパニックボタン機能もあります。

「米国では役立つかもしれないけど、日本で本当に使えるアプリなのか」と感じるかもしれません。海外製品を15年間ローカライズしてきた実績のあるCBAのエンジニアが、導入した学校に合わせて丁寧に調整していきますので安心してください。
「とりあえず情報を聞いてみたい」「自分の学校で何ができるか知りたい」という方は気軽にお問い合わせください。

最後に

米国の学校ではリスクマネジメント・クライシスマネジメントの2つが行われています。日本ではどうしても緊急事態発生中、もしくは発生後のクライシスマネジメントに目が向きですが、インシデントを防止するリスクマネジメントも行っていかなければなりません。
自然災害だけではなく、いじめやメンタルヘルスのリスクマネジメントも行なっていく必要があります。

リスクマネジメント・クライシスマネジメントの仕組みづくりは簡単ではありません。しかし自治体の防災情報を活用したり、危機管理システムのベンダーからサポートしてもらったりするなら、生徒と教師を安全に守れるマニュアルを作成できるでしょう。

いきなり完璧な仕組みを作ろうとするのではなく、PDCAサイクルを回しながらより良い仕組みを作っていくことを目指してください。

参考情報:https://www.crisisgo.com/blog/4-elements-of-a-proactive-approach-to-threat-assessment
https://www.crisisgo.com/blog/2-ways-to-make-standard-response-protocols-srps-more-effective
https://www.crisisgo.com/blog/3-ways-to-give-teachers-peace-of-mind-during-covid-19
https://www.crisisgo.com/blog/3-key-features-for-student-health-and-safety-tracking-tools
https://www.crisisgo.com/blog/why-stop-with-a-reporting-line

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