カスタマーサポート業務の効率化が課題と考えるコールセンター管理者やBPO担当者は多くいます。「問い合わせ対応時のミスが多い」「利用者の満足度が低い」「サポート拠点の運用コストが高い」といった課題を解決するために業務の効率化は欠かせません。
今回はカスタマーサポートを効率化させる以下の2つのポイントを考えます。
- AI活用
- KPI設定
上記の点は海外でも重視されているポイントです。この記事では、いまAI活用とKPI設定がなぜ大切なのか分析していきます。
カスタマーサポート業務を効率化してスタッフが働きやすい環境を作り、顧客満足度を向上させていきましょう。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、15年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。
カスタマーサポートの役割
カスタマーサポートの業務効率化に真剣に取り組むべきなのはなぜでしょうか。なぜならカスタマーサポートの役割が変化してきているからです。
従来のカスタマーサポートの役割とは、お客さまの問い合わせに答えることでした。企業のプロダクトを購入する前か購入後かに関わらず、お客さまの質問に答えることがカスタマーサポートの役割だったのです。
しかし現代では質問に答える以上のことが求められます。顧客満足度が重視されるため、「問い合わせに答える時間」「返答内容の正確さ」「どのチャネルで答えるか」が重要になっています。問い合わせへの返答だけでなく、「パーソナライズされたお得情報やお役立ち情報を伝える」ことも求められています。
現代のお客さまが求めるカスタマーサポートの役割を十分に果たすには、業務効率化が欠かせません。
サポート業務を複雑化させる原因
「最初は問題なかったのにいつの間にか業務が複雑化していた」「気がついたらサポートセンターの効率が悪くなっていた」ということがあるかもしれません。
カスタマーサポートの業務を複雑化させる原因は何でしょうか。
通常よりも多い問い合わせ
コロナ渦によってカスタマーサポートへの問い合わせは増加しています。家にいる時間が長いためECサイトで購入する機会が増えました。結果として、商品の購入前や購入後に問い合わせる回数が増えています。
配送の遅延に関する問い合わせも増加しました。パンデミックの長期化による予約のキャンセル、払い戻しの延長といった問い合わせも多くなっています。
在宅ワークへの適応
在宅ワーク導入の準備や運用のために多くのリソースが割かれています。その影響で現場で対応できる人員が不足するかもしれません。
拠点で働くオペレーターと、在宅ワークのオペレーターが処理できる問い合わせの量や内容が異なる場合があります。結果として現場の業務が複雑化してしまうのです。
リモートでの研修
スタッフの研修がリモートで行われることが多くなりました。そのためリモートに合わせた研修の準備が新たに必要になったり、一度に教えられる内容が限られるので研修時間が長引いたりしています。教える社員も参加するオペレーターも現場にる時間が減るため、作業効率が落ちてしまうのです。
オペレーターごとに手順が違う
お客さまの問い合わせに答える手順がオペレーターごとに違うと効率が悪くなります。ベテランと新人の手順が同じでないと現場に混乱が生じます。お客さまも問い合わせる度に対応が違うので、不満をためてしまいます。
情報共有ができていない
複雑な質問、頻繁にされる質問、クレームの対応などの情報が共有されていなければ効率よく問い合わせに対応できません。販売しているプロダクトに関する知識が共有されていないため、現場が混乱することもあります。
カスタマーサポートに問い合わせ管理システムは必要?
業務の効率化を迅速に行う方法は、問い合わせ管理システムの活用です。もしエクセルを使って問い合わせに対応しているのであれば、問い合わせ管理システムを導入すれば簡単に業務を効率化できます。
すでに問い合わせ管理システムを導入しているなら、システムの使い方を工夫することで効率化を進められます。
注意すべきなのは、システムの使い方を間違うと業務は効率化しないという点です。
業務を効率化させる問い合わせ管理システムの使い方とは、AI機能とKPI分析機能を活用することです。
カスタマーサポートの業務を効率化させる2つのポイント
現代におけるカスタマーサポートの業務を効率化させるためには、「AI機能の活用」と「KPI分析」が必須です。
なぜこの2つのポイントが必須なのでしょうか。AI機能とKPI分析が必要な理由を深堀りしていきます。
AI機能はなぜ必要?
AI機能が必要なのは、現代の複雑化したカスタマーサポート業務を効率化するのに貢献してくれるからです。
ガートナー社の最新の分析では以下のように述べられています。
「2024年末までに、75%の組織が人工知能(AI)の試験運用から正式な運用化へ移行するだろう。結果、ストリーミングデータと分析インフラが5倍に増加すると予想される」
June 2020 Gartner, Inc.
「2025年までに、マルチチャネルのカスタマーエンゲージメント・プラットフォームにAIを組み込んだカスタマーサービス組織は、業務効率を25%上昇させるだろう」
July 2019 Gartner, Inc.
近年、AIの音声処理技術と自然言語処理(NLP)技術は大きく進歩しました。AIを活用することで、カスタマーサポートに集まる膨大なデータを効率よく分析できるようになります。
収集するデータや分析能力が今までの5倍以上になるのです。問い合わせ管理システムにAIを組み込むことによって、業務効率を25%向上させられます。
カスタマーサポートへのAI導入は今後のトレンドになっていくことでしょう。
AI導入のメリット
カスタマーサポートへAIを導入するメリットは主に3つあります。
- カスタマーサポート業務の自動化
- オペレーターのサポート
- 予測分析
それぞれのメリットについて簡単に説明していきます。
カスタマーサポート業務の自動化
カスタマーサポートでは膨大なデータを扱います。顧客データ、問い合わせ情報、ナレッジなどです。毎日増えていくデータをAIは自動で整理してくれます。
そしてオペレーターが対応をするときに、必要なデータを教えてくれるのです。AIが業務を自動化してくれるおかげで、問い合わせ処理時間(AHT)は短くなり、人的エラーも減らせます。
オペレーターのサポート
問い合わせ対応をするオペレーターは、調査に時間を取られることがあります。過去のFAQやマニュアルから適切な返答を探さなかればなりません。または似たような質問の過去のメールを検索しなければいけないこともあるでしょう。
しかしAIがあれば、必要な情報や検索キーワードを教えてくれるので調査の時間を節約できます。
予測分析
AIは膨大なデータに基づく予測が得意です。各オペレーターのタスクを処理する能力、人員管理、問い合わせで多いトピックなどのデータを日々分析していきます。そして今後予想される問い合わせトピックや、繁忙期を予測することができるのです。
AIの予測分析は顧客満足度の向上に貢献します。
たとえば、ある時期に返品の問い合わせが急増したとしましょう。するとAIは「返品」「払い戻し」「製品番号」などのキーワードが今後も増加すると予測し、アラートを出します。製造部門はAIのアラートによって、製品に必要な改善を行い、顧客満足度を向上させられるのです。
KPI設定はなぜ必要?
続いてカスタマーサポート業務を効率化させるための2つ目のポイント「KPI設定」について考えてみましょう。
KPIを設定することで、顧客の利益が促進され、会社の進歩が実現できます。なぜでしょうか。アクセンチュアの調査で次の点が指摘されています。
「45%の顧客が、より高いレベルのサービスが保証されるなら、製品に対してより多くのお金を支払うと回答」
MARCH 23, 2016 Accenture
KPIを設定し高いレベルのサービスを提供するなら、顧客はより多くのお金を支払います。
新規顧客が増えて企業の収益が上がります。さらに顧客の維持率や解約率も改善されていきます。
しかしカスタマーサポートにとって、顧客の増加は注意すべきタイミングです。
なぜなら顧客が増えるとカスタマーサポートの規模が大きくなるからです。サポートチームが大きくなるとサービスの質を維持するのが大変になります。
それでもKPIが設定されていれば、質の高いサービスを提供し続けられます。顧客の利益促進と会社の進歩を継続していけるのです。
ではどのようなKPIを設定しておけばよいでしょうか。
カスタマーサポートで設定すべき11のKPI
海外のカスタマーサポートが設定している11のKPIを紹介します。
- CSAT
- 会話レビュー
- 内部品質スコア
- 会話ごとの返信
- 応答時間
- 平均処理時間
- 会話量
- オペレーターごとの会話
- 進行中の会話
- 会話あたりのコスト
- 初回解決率
各KPIについて解説していきます。
CSAT

CSATとはCustomer Satisfactionの略で、顧客満足度のことです。お客さまが企業のサービスやプロダクトにどの程度満足しているか判断するために使われる指標です。
測定の仕方は、応対後に「今回のサポートをどのように評価しますか?」と質問する方法が一般的です。上記のような絵文字で測定されることが多いです。
会話レビュー(Conversations Reviews)
会話レビューは、サポートQAや内部レビューと呼ばれることがあります。企業内部でカスタマーサポートを評価する指標です。
会話レビューとCSATを使用すると、提供しているサポート内容に関する分析が可能になります。たとえば、会話レビューが高くてCSATが低い場合、企業が独りよがりなサポートをしている危険性があります。反対にCSATが高くて会話レビューが低い場合、企業が顧客ニーズを掴みきれていないサインかもしれません。
内部品質スコア(Internal Quality Score)
内部品質スコアは会話レビューのさらに細かなKPIです。以下の項目が内部品質スコアとして測定されます。
- オペレーターの話すトーン
- 技術的な知識
- ヘルプ資料の使用方法
各項目の目標値を設定し、目標値以上はポジティブラベル、以下はネガティブラベルとして各オペレーターに貼り付けます。内部品質スコアによって重点的にトレーニングやサポートが必要なオペレーターを把握できます。
会話ごとの返信(Replies Per Conversation)
会話ごとの返信はRPCと略されます。一つの問い合わせに対し、何回のやり取りで解決したかを測るKPIです。
RPCを測定しようとすると、1ヶ月で2万件〜7万件の会話を確認しなければなりません。対象となる会話数が膨大なため、コールセンターによっては無作為にいくつかの会話を抜き出し、平均値を割り出しています。
しかし最新のコールセンターは、AIに全会話の測定と分析を任せています。
RPCが少ないほど、迅速に問い合わせを解決したことになります。ある調査では「12ヶ月間でFCR(初回コンタクト解決率)の改善を報告した企業の75%が、顧客満足度の向上も実感している」と報告されています。ハブスポットの分析でも初回解決率が1%増加すると顧客満足度が1%増加することがわかっています。
応答時間(First Response Time)
FRTと呼ばれる応答時間は、最初の応答までにかかる時間のことです。
いくつかの統計では、電話で問い合わせる53%の顧客は、サポート担当者の応答を待つ時間は3分が妥当と考えています。しかしライブチャットの場合、顧客が期待する応答時間は短くなります。92%の顧客満足度を得た応答時間は平均1分36秒でした。つまり1分36秒以上待たされると顧客満足度が低くなるのです。
AI機能搭載の問い合わせ管理システムであれば、オペレーターの応答時間が短くなるようサポートしてくれます。
平均処理時間(Average Handle Time)
平均処理時間(AHT)とは、問い合わせ処理にかかる平均時間です。以前は1コールあたりの時間になっていましたが、現在は問い合わせのマルチチャネル化に伴い指標が進化しています。
従来は顧客が問い合わせるチャネルは電話だけでした。そのためAHTの測定はコールが始まってから終わるまでを測定すればよかったのです。しかし現在はメール、ビデオ、チャットが含まれるようになり、従来の測定方法では対応できなくなりました。現在のAHTの測定方法は、顧客から問い合わせキーワード(クエリ)を聞いてから解決までの時間を測定しています。
会話量(Conversation Volume)
会話量とは、拠点全体がどれだけの量の問い合わせを処理したか図る指標です。対応したコール数だけでなく、メール、SNS、チャットなどの数も含まれます。
拠点全体の会話量を測定することで、年間の忙しい時期を見える化でき、人員の運用を効率的に行えます。特に営業時間を超えても会話量が多い時期は、一時的に24時間体制の運用が必要かもしれません。
オペレーターごとの会話(Conversations per Agent)
各オペレーターが対応した問い合わせの数を測る指標です。
オペレーターごとの会話を測定するタイミングは、平均値が取りやすい時期であるべきです。休日や繁忙期は避けてください。さらに担当業務によって処理できる問い合わせ数は変化します。平均値は同じチームの中で出すようにしましょう。
進行中の会話(Current Open Conversations)
進行中の会話とは、今対応している問い合わせチケットの数と、チケットが開かれてからの時間を含んでいます。各チケットが効率よく処理されているか図る指標です。
保留時間が平均値よりも長くなっているなら、オペレーターが何らかの問題を抱えているのかもしれません。リーダーはナレッジの提供やチケットの優先順位の付け方などをアドバイスできるでしょう。
会話あたりのコスト(Cost Per Conversation)
会話あたりのコスト(CPC)には、オペレーターの給与、福利厚生、ハードウェアコスト、ソフトウェアコスト、その他の諸経費が含まれます。CPCの計算方法は、チームの総運用コスト÷会話の総数です。
会話あたりのコストを計算する際の注意点は、オペレーターが顧客の問い合わせに対応している時間だけを含めることです。オペレーターの研修時間や、履歴入力に費やした時間は含みません。
初回解決率(First Contact Resolution Rate)
初回解決率は、1回目の応答でお客さまの問題を解決できた割合を表します。
カスタマーサポートの規模が大きくなるほど、初回解決率は下がる傾向があります。理想は拠点が大きくなっても初回解決率の数値が変わらないことです。
カスタマーサポートの業務効率化に役立つ問い合わせ管理システムとは
カスタマーサポートの業務効率化に役立つ問い合わせ管理システムには2つの特徴があります。
- AI機能が使える
- 分析がしやすい
AI機能が使える

AI機能が搭載されていれば、お客さまからの問い合わせを自動で分類し、内容に合わせて最適な担当者へ割り当ててくれます。さらにメールの本文から問い合わせ内容を分析し、オペレーター画面へ自動で入力してくれます。返信に必要なナレッジや、過去の類似回答も表示してくれるので短時間で対応を完了できます。
分析がしやすい

分析がしやすいことも大切な特徴です。どんなにKPIを細かく設定しても、分析が難しければ業務は効率化されません。
設定したKPIを棒グラフや散布図などで見える化してくれるツールを選んでください。KPIの設定や変更がノーコードでできることも運用を楽にしてくれます。ドラッグ・アンド・ドロップでダッシュボードの並べ替えができるツールも人気です。
最後に
カスタマーサポートを効率化させるポイントは、AIの活用とKPIを設定することの2つです。
すでに問い合わせ管理システムを導入しているのであれば、AI機能の活用とKPI分析を行ってください。これから問い合わせ管理システムを導入したかったり、入れ替えを検討したりしている場合は、AIとKPI分析機能が充実している製品を選びましょう。
カスタマーサポート業務を効率化させていくなら、顧客満足度は向上し、企業はより成長していきます。
カスタマーサポートの業務改善や製品選びで相談されたいときには株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューへお問い合わせください。
海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、15年間にわたり日本市場へローカライズしてきた実績を生かしてサポートさせていただきます。