製造業のデジタル化、製造業のDXとよく耳にするようになりました。しかし一口にデジタル化といっても、実際の製造工程をデジタル化することもあれば、社内・社外のコミュニケーションの部分をデジタル化するケースもあります。

今回はコミュニケーション部分にフォーカスし、デジタル化をどのように進められるかを考えます。なぜ社内や社外でのコミュニケーションをデジタル化すべきなのか、何から始めたら良いかを解説します。最後には失敗しないデジタル化ツールの選び方も紹介するので参考にしてください。

こんなお悩みを持つ企業におすすめの記事です。
・「デジタル化をどこから始めたら良いかわからない」
・「顧客が減り続けている」
・「新規の顧客が見つからない」
・「顧客対応のミスについてのクレームが増えている」
・「問い合わせ担当者が、顧客対応だけでいっぱいいっぱいになっている」

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

製造業のデジタル化とは

製造業のデジタル化とは、これまでのアナログな手法で管理していた業務を、デジタル技術を使って管理することです。たとえば職人のスキルをデータ化して検索できるようにしたり、ペーパー管理だった帳票をクラウドで管理して利便性を高めたりすることです。

製造業のデジタル化をヘルプデスクから始めるべき理由

製造業のデジタル化は現場起点だけでなく、ヘルプデスクから始めることができます。社内と社外のコミュニケーションの要であるヘルプデスクから、デジタル化を進めるべきなのはなぜでしょうか。

経済産業省の2022年版ものづくり白書によると、IT投資で解決したい経営課題に「社内コミュニケーション強化」が含まれています。

IT投資によって「社内コミュニケーション強化」する

白書の中ではこのように解説されています。

経営者がIT 投資によって解決したい課題の内訳をみると、これまでは「今後の重点課題」であった「働き方改革(ニューノーマル、テレワーク)」や「社内コミュニケーション強化」が「取組中の課題」として回答される割合が増加した

第2節 DXによる競争力向上 149ページ

これまでIT投資によって「社内コミュニケーション強化」することは、製造業界が取り組みたい課題でした。それが今では、多くの企業が実際に取り組み始めているのです。なぜなら、社内コミュニケーション強化が業務の効率化とスピードアップに不可欠であると判明してきたからです。

ヘルプデスクをデジタル化するなら、社内のコミュニケーションを強化できるだけではありません。情報がクラウドで管理されるため、テレワークなどの働き方改革にも同時に対応できます。

ヘルプデスクの強化は顧客チャネル強化へ直結

覚えておきたい点として、ヘルプデスクを強化することは、顧客チャネルや営業力強化にも直結します。ヘルプデスク業務がデジタル化することで、効率よく顧客や販売店とコミュニケーションが取れるようになるからです。

もし、今ヘルプデスクで以下のような不満や課題があるなら、すぐにデジタル化を進めてください。

  • 「取引企業から同じ問い合わせが多い」
  • 「問い合わせの量が多すぎて対応しきれない」
  • 「アフターサービスの対応状況が共有できてない」
  • 「問い合わせ情報が一元化されていない」

上記の問題は、すべてデジタル化によって解消できます。

ヘルプデスクからデジタル化を始めることで「社内コミュニケーションの強化」「業務の効率化とスピードアップ」「テレワークなどの働き方改革」「顧客チャネルや営業力強化」が実現できます。たしかに製造業のデジタル化は、ヘルプデスクから始めるのが効果的ではないでしょうか。

製造業のデジタル化をヘルプデスクから始めるメリット

製造業のヘルプデスクをデジタル化するメリットは他にもあります。

  1. ナレッジの蓄積
  2. 海外顧客の対応
  3. 複数チャネルを一元管理
  4. AIと自動化で生産性が向上
  5. 個人情報の万全な管理
  6. レポートをマーケティングへ活かす

ここに挙げた6つのメリットについて説明していきます。

ナレッジの蓄積

ヘルプデスクをデジタル化することで、ナレッジの蓄積ができます。似たような問い合わせが来たときに、保存されているナレッジを参考にしてスピーディに対応していけます。ベテラン社員に頼っていた複雑な案件が誰でも対応可能になります。

海外顧客の対応

ヘルプデスクをデジタル化するなら、海外の顧客からの問い合わせ、販売代理店からの問い合わせを一元管理できます。

複数チャネルを一元管理

現在、顧客からの問い合わせはメールからだけではありません。webフォーム、チャット、アプリからも問い合わせが寄せられます。今後はさらに問い合わせチャネルが増加するでしょう。

チャネルごとに問い合わせを管理するシステムが存在すると、業務は複雑になります。ヘルプデスクのデジタル化によって、多チャネルの一元管理をすることができます。管理が簡単になるため、ミスが減ったり応答を早くしたりして顧客満足度を向上させられます。

AIと自動化で生産性が向上

問い合わせメールの仕分けを手作業でしているとミスが起きます。対応漏れや二重対応が発生してしまいます。AIや自動化機能を搭載している問い合わせ管理システムでは、ミスを減らせます。

個人情報の万全な管理

ヘルプデスクでは、顧客の個人情報や取引先の機密情報を扱うことがあります。定期的に更新される個人情報保護に関するポリシーを、ヘルプデスク担当者が毎回チェックするのは大変です。ヘルプデスク業務をクラウド化していれば自動で更新されます。

レポートをマーケティングへ活かす

最新の問い合わせ管理システムは、レポート機能が充実しています。日々扱う問い合わせ内容を分析し、レポートしてくれる機能はマーケティングへ活かせます。地域や業界ごとのニーズを把握できるので、事業や業務を超えたデータ活用をしていけるのです。

参考情報:ヘルプデスク業務のデジタル化はメリットばかりではありません。デメリットも3つほどあります。詳細は以下の記事を参照してください。

製造業におけるデジタル化がうまくいかない理由

製造業のデジタル化は、簡単に実現するものではありません。デジタル化を実現したとしても、効果をすぐに感じられるわけでもありません。もう一度経済産業省の2022年版ものづくり白書を見てみましょう。

「生産性の向上」「開発・製造等のリードタイムの削減」においては40%以上がデジタル化の効果を実感
引用:第3節 ものづくり人材に係るデジタル技術の活用の状況 84ページ

上記の表によると、「生産性の向上」「開発・製造等のリードタイムの削減」においては40%以上がデジタル化の効果を実感しています。しかし、「顧客への細やかな対応や迅速な対応」「取引先など社外コミュニケーションの円滑化」「社内コミュニケーションの円滑化」に関して効果を実感しているのは20%前後です。

なぜ思ったような効果を実感できないのでしょうか。

デジタル技術を活用する際の課題は、「ノウハウ不足」「人材不足」
第3節 ものづくり人材に係るデジタル技術の活用の状況 85ページ

デジタル技術を活用する際の課題は、「ノウハウ不足」「人材不足」です。新しい技術を導入しても活用するためのノウハウが足りない、活用を促す人材が足りないことが、デジタル化の効果を実感できていない理由です。どのようにこの課題に取り組めるでしょうか。

デジタル化の課題を解決法する方法

「ノウハウ不足」「人材不足」を解消する方法は3つあります。

  • 研修・中途採用
  • 補助金の活用
  • 扱いやすいデジタルツールの導入

経済産業省の2022年版ものづくり白書には、「デジタル技術の活用に向けたものづくり人材確保の取組内容」が書かれています。

「デジタル技術の活用に向けたものづくり人材確保の取組内容」が書かれています。
第3節 ものづくり人材に係るデジタル技術の活用の状況 86ページ

多くの企業が実施しているのが、「研修・教育訓練」「中途採用」です。「研修・教育訓練」を実施する際には、厚生労働省の「教育訓練給付制度」があるので活用しましょう。

「研修・教育訓練」を実施する際には、厚生労働省の「教育訓練給付制度」がある
第2節 DXによる競争力向上 136ページ

参考情報:「教育訓練給付制度とは」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html

3つ目の方法は、扱いやすいデジタルツールを導入することです。専門的な知識がなくても扱えるSaaS型ヘルプデスクツールを導入しましょう。

失敗しない最新ヘルプデスクツールの選び方

限られた人員であっても、IT活用のノウハウが限られていても、扱いやすいデジタルツールをどのように選べるでしょうか。「最新ヘルプデスクの失敗しない選び方6つのポイント」を紹介します。

  • 専門知識がなくても使えるかチェック
  • 他システムとの連携
  • 必要な機能の選定
  • 機能の拡張性
  • 予算
  • 無料お試し期間

それぞれのポイントを見ていきましょう。

専門知識がなくても使えるかチェック

最新ヘルプデスクツールは多機能です。各機能をノーコードで利用できるか、ドラッグ・アンド・ドロップで管理できるかチェックしてください。

サポートが充実しているかも確認すべきです。どんなに大手でも、どんなに使いやすいツールであっても、メーカーのサポートが手薄で、ツールの利用をユーザーに丸投げしているような製品は使いこなすのが大変です。ツールをしっかり使いこなすためには、親身になってサポートしてくれるベンダーが提供する製品を選んでください。

他システムとの連携

他システムとの連携ができないヘルプデスクツールは、効率化を妨げる原因になるので注意してください。必ず他システムとの連携が可能なツールを選んでください。

CTIと連携させて電話対応、CRMと連携させて顧客情報を表示、ERPと連携させて企業内の基幹情報を取得できるようなツールが使い勝手が良いです。

必要な機能の選定

最新ヘルプデスクツールは多機能です。使用できる機能の数ごとに毎月の利用料が変わります。そのため自社が必要な機能を絞り込み、優先順位を決めておきましょう。

機能の拡張性

ヘルプデスクツールの導入当初は、必要十分な機能があったものの、ビジネス環境が変化することで必要な機能が増えることがあります。

とくに有人チャットやチャットボットといったチャット機能、さらにビデオ通話や画面共有機能は今後一般化する可能性が高いです。長く使っていくためにも、ノンボイス機能やビデオ機能に強い製品を選びましょう。

無料お試し期間

ヘルプデスクツールは高機能なので、製品の機能をよく知るために無料お試し期間を有効活用してください。「自社に必要な機能はどれか」「操作性は優れているか」「カスタマイズはしやすいか」などをチェックしましょう。無料お試し期間は最低でも30日は必要です。

注意すべきなのは、お試し期間が無料だと、導入にかかわる担当者が真剣に操作方法を学ぼうとしないケースがあることです。そこで有料の導入支援サービスに申し込み、ある程度のコストを掛けて担当者たちがやる気をもって導入に取り組めるようにすることも大切です。

最後に

製造業のデジタル化をヘルプデスクから始めると、社内コミュニケーションを強化したりテレワークなどの働き方改革を進めたりできます。さらに顧客チャネルや営業力強化もしていけます。多くの企業がIT投資で解決したい経営課題をヘルプデスクのデジタル化によって実現できるのです。

ヘルプデスクをデジタル化する際には、使いやすいツールを選ぶようにしましょう。使いやすいツールの特徴は、各機能をノーコードで利用できるか、ドラッグ・アンド・ドロップで管理できることです。サポートが手厚かったり、ほかシステムとの連携が簡単だったりする点も重要です。

製造業のデジタル化をヘルプデスクから始めることで、社内と社外のエンゲージメントを高めていきましょう。