通販・EC事業で顧客管理を効率的に行えていますか。現代の多様化するお客さまのニーズに対応し、事業を長期的に続けていくには、ツールを使った顧客管理が欠かせません。

顧客管理をレベルアップさせるのにどんなツールを使ったらよいの?」「すでにツールを使っているがうまく機能していない、どうしたらよい?」という問いに今回の記事では答えていきます。

顧客管理の質を上げるために役立つツールの選び方9つを紹介します。最後には、失敗しないために覚えておきたいツールを選ぶ際の注意点を解説するのでご覧ください。

海外の最新コールセンターシステムやデジタル・コミュニケーションツールを、16年間にわたり日本市場へローカライズしてきた株式会社コミュニケーション・ビジネス・アヴェニューが解説します。

通販・ECにおける顧客管理とは

通販・EC事業における顧客管理とは、お客さまの「個人情報」と「問い合わせ内容」を記録し管理することです。それぞれで管理すべき情報は以下のとおりです。

個人情報▶氏名、住所、購入履歴                                  

問い合わせ内容▶質問内容、問い合わせまでの行動履歴、問い合わせ時の利用チャネル          

顧客管理をレベルアップさせる必要性

「個人情報」と「問い合わせ内容」といった顧客情報の管理をレベルアップすべきなのはなぜでしょうか。

なぜなら国内における通販・ECマーケットの急拡大はもはや望めないからです。残念ながら現状は、限られたマーケット人口を各社で奪い合っています。

現在の国内市場で勝ち抜き、持続的な事業を行っていくには、LTV(Life Time Value)を最大化しなければなりません。

つまり一度サービスを利用したお客さまが、生涯を通じて自社のサービスを利用し続け、利益をもたらしていかなければならないのです。それには顧客管理をレベルアップし、顧客の利便性、満足度を向上させていく必要があります。

顧客と企業のコミュニケーションが減少

現在の若者たちはコールセンターに電話で問い合わせをしたがりません。自分でWEBサイトやFAQを見て自己解決することを好みます。

通販・EC事業者にとって、お客さまと継続的にコミュニケーションを取る機会が減っているのです。

事業主と顧客のタッチポイントが減少している中で、どのように個人情報や問い合わせ内容を記録し管理していけるでしょうか。

顧客管理ツールを使ってお客さまの動線を探り、好みを理解し、ニーズを把握していけます。ツールを使うことで顧客情報を一元化し、社内の全部署で情報を共有できるのです。結果として、お客さまに適切なサービスを提供し、LTVを最大化していけます。

通販・ECの顧客管理に使用されるツール

通販・ECにおいて顧客管理に使用されるツールは3つあります。

CRM

CRMとは顧客関係管理(Customer Relationship Management)のことです。事業主とお客さまの関係性を管理するツールです。顧客の氏名、住所、購入履歴などを管理できます。

※CRMには、顧客の対応履歴を管理できるSFAツールや、購買意欲の高い顧客を見つけられるMAツールが含まれることがあります。

ERPシステム 

ERPシステムとは、Enterprise Resource Planning(企業資源計画)の略称で、事業主側の業務情報を管理できるシステムです。販売、在庫、会計管理などができるシステムです。

問い合わせ管理システム

問い合わせ管理システムとは、お客さまからの問い合わせを1つの画面で管理・共有できるツールです。

このシステムを導入すると、「どの顧客が、いつ、どのチャネルで、どんな問い合わせをしたか」「どの担当者が、どの問い合わせを、いつ、どのように処理し、どんな結果になったか」を共有できます。

最新の問い合わせ管理システムは、CRMとERPシステムと連携させて利用できます。コールセンターシステムと連携させられるツールもあります。

顧客管理に必須な9つの「問い合わせ管理システムの選び方」

通販・EC事業者の多くはすでに何らかのCRM、ERPシステム、問い合わせ管理システムを活用していることでしょう。しかし3つのシステムを連携して活用していないかもしれません。

各システムで情報を管理し、共有がなされていないと、質の高いサービスをお客さまに提供することが難しくなります。つまり、顧客管理をレベルアップさせるカギは「CRM」「ERPシステム」「問い合わせ管理システム」という3つのシステムを連携させることにあるのです。

ツールを連携して顧客対応ができる問い合わせ管理システムは数多くあります。では数ある製品から自社にピッタリのツールを選ぶにはどうしたらよいでしょうか。

次の9つのチェックポイントを検討してください。

  1. 無償か有償か
  2. クラウドかオンプレか
  3. 既存システムと連携できるか 
  4. 必要な機能が揃っているか 
  5. AI機能は搭載されているか
  6. 自動化(RPA)に対応しているか
  7. 対応チャネルは豊富か 
  8. セキュリティは万全か 
  9. 価格は適正か 

各チェックポイントについて説明していきます。

1.無料か有料ツールか

問い合わせ管理システムには無料と有料のツールが存在します。当然のことながら無料ツールは機能が簡素で、使用できる人数が限定されています。有料ツールは使用できる機能と人数によって、複数のプランが設けられていることが多いです。

自社が利用したい機能、実際に使用する担当者の人数などを考慮して、無料ツールにするか有料ツールにするか判断してください。

2.クラウドかオンプレか

問い合わせ管理システムには、クラウド上で利用できる製品と、自社設備内で運用できるオンプレ版があります。

クラウド型の問い合わせ管理システムの特徴
▶社内の設備調達が必要なし
▶必要なときにサーバーの増設やスペックの変更が可能
▶常に最新バージョンが利用可能
▶リモートワーク運用が簡単

オンプレ型の問い合わせ管理システムの特徴
▶導入コストがかさんだり管理に専門知識が必要だったりするが、設計や運用の自由度が高い
▶データはローカル保存なので管理がしやすい

クラウドかオンプレのどちらにするかは、事業主の設備や人材の状況に合わせて決めてください。

「クラウドはセキュリティが心配」
現在のクラウドサービスはセキュリティ対策が非常に進んでいます。
クラウドのほうが直近のリスクにすぐ対応できるため、手動アップデートが必要なオンプレより安全に運用ができます。

3.既存システムと連携できるか 

前述しましたが、問い合わせ管理システムは単独で使うよりも、CRMやERPシステムと連携させることで実力を発揮します。他のシステムとデータを共有することで、顧客の深いニーズを理解したり、顧客対応のミスを防げたりするのです。

4.必要な機能が揃っているか

自社が必要とする機能が揃っているか確認してください。CRMやERPシステムとの連携機能は当然として、分析機能マルチデバイス機能があるかチェックしましょう。

とくにAI機能自動化(RPA)機能は、これからの顧客管理に欠かせない機能です。

5.AI機能は搭載されているか

問い合わせ管理システムにAI機能が搭載されていれば、限られた人員でも顧客対応のレベルアップが可能です。通販・EC事業においてAIはどんなことをしてくれるのでしょうか。

問い合わせをカテゴリごとに分け、最適な担当者へ自動割り当て:案件のたらい回し、対応漏れを防げます 

自動でデータ入力:問い合わせの後処理時間を短縮できます                      

返信に必要なナレッジや類似案件を表示:返信のための検索時間を短縮します              

▶問い合わせ管理システムにAIが搭載されると何ができるのか、弊社の製品動画からもご覧になれます。

6.自動化(RPA)に対応しているか

最新の問い合わせ管理システムは、よく繰り返される処理を自動化できます。しかし自動化の設定が難しければ運用はうまくいかないでしょう。

ノーコードローコードで自動化できるツールを選んでください。

7.対応チャネルは豊富か 

お客さまが問い合わせに使うチャネルは電話だけではありません。以下のような多岐にわたるチャネルが使用されます。

  • メール
  • SNS
  • チャット
  • アプリ
  • カスタマーポータル

最近は、ECアプリを使って直接チャットで問い合わせたり、ビデオ通話したりするほうが便利と感じるお客さまが増えています。カスタマーポータルを作って自己解決を促す施策を行っている事業者も増加中です。

電話やメールだけでなく、さまざまなチャネルに対応できるオムニチャネル問い合わせ管理システムを選んでください。

8.セキュリティは万全か 

通販・ECで扱う情報には個人情報が必ず含まれます。万全なセキュリティ対策がされているツールを選んでください。ほとんどのハッキングは海外サーバーから行われます。国際基準のセキュリティ要件を満たしているツール、海外で実績のあるツールを選ぶと安心です。

9.価格は適正か

無料ツールを選ぶのでない限りコストがかかります。導入にも運用にもコストがかかってきますので、適正な価格かどうかを確認してください。繁忙期がはっきりしている事業者であれば、1ヶ月単位でプラン変更ができる製品を選ぶと運用コストを抑えられます。

無料お試し期間やフリープランが用意されている製品は、とりあえず使ってみて本導入を決められるのでおすすめです。

問い合わせ管理システムを選ぶ際の注意点

問い合わせ管理システムの比較サイトを見ると、上位に必ず以下のような製品が表示されます。

  • Re:lation(リレーション)
  • Zendesk
  • メールワイズ
  • メールディーラー
  • yaritori

数ある問い合わせ管理システムの中から一つを選ぶ際に、失敗しないために覚えておきたいポイントは5つあります。

  1. メール対応に特化していないか
  2. カテゴライズできないメーラー機能
  3. 使いやすさ優先でカスタマイズ性が低い
  4. 価格は安いが機能が弱い
  5. 操作が難しい

上記の5つの注意点について見ていきましょう。

メール対応に特化していないか

問い合わせ管理システム=メール管理システムと考えている事業者は多くいます。しかし前述しましたが、現在の問い合わせチャネルはメールだけではありません。オムニチャネル対応の問い合わせ管理システムを選ぶほうが現在と将来のニーズに対応できます。

カテゴライズできないメーラー

事業者によっては、メールによる問い合わせがまだまだ多いのが現実です。しかしすでに導入しているツールのメール機能に不満を持つ事業者は多くいます。たとえば以下のような不満です。

「いま使っているメーラーはカテゴライズできない」
「全てのメールが同じ受信箱に入ってしまう」
「問い合わせ内容に関係なくいつも同じテンプレートが表示される」
「どの問い合わせにも同じケースビューしか表示されない」

上記の不満を解消するのはどんなメーラーですか。

カテゴリごとにUIやテンプレートが自動で切り替わるメーラーです。

メーラー機能が優れている問い合わせ管理システムは、カテゴリごとにテンプレートやケースビューを表示してくれるので使い勝手が良いです。メールの問い合わせが多い通販・EC事業者は、カテゴライズが優れているツールを選ぶと失敗しません。

使いやすさ優先でカスタマイズ性が低い

使いやすさを優先させたため、カスタマイズ性が低い製品があります。とくにダッシュボードのカスタマイズができない製品はストレスが溜まります。

たとえば収集したデータを分析するダッシュボードが、ワンクリックで簡単に切り替えられるかどうか確認しましょう。「複数のKPIをワンクリックで追加や削除ができる」「ダッシュボードの並べ替えがドラッグアンドドロップでできる」製品は現場で運用がしやすいです。

価格は安いが機能が弱い

価格が安いから導入したものの、「すぐにストレージ容量が一杯になる」「何かと追加料金を加算させようとする」と言った製品があるので注意してください。

ストレージ容量の制限がどれくらいか、アップロードするファイルの容量制限はどれくらいか事前に確認しましょう。

操作が難しい

カスタマイズが得意な製品は操作が難しいことがあります。フリープランや無料期間が設けられている製品であれば、ある程度操作に慣れてから本格導入することができるのでおすすめです。

無料期間は最低30日はある製品を選んでください。

最後に

通販・ECの顧客管理をレベルアップさせるためには、CRMやERPシステムと連携させられる問い合わせ管理システムを活用してください。

最新の問い合わせ管理システムを選ぶときには、AI機能や自動化(RPA)機能がついているツールを選びましょう。

ツールを選ぶ際にはカテゴライズできないメーラーや、ダッシュボードのカスタマイズ性が低い製品に注意してください。

「新しいツールが使いこなせるかわからない」と不安なときには、無料期間やフリープランがある製品を一旦使って見ると良いです。問い合わせ管理システムを使うことで顧客対応の品質を向上させ、LTVを最大化していきましょう。