電子インボイス制度に対応するにはさまざまな準備が必要です。「本当に自社も対応しなければいけないのかわからない」「忙しいから電子インボイス制度への対応が億劫」と感じるかもしれません。
今回は電子インボイス制度に対応しないとどうなるのか考えます。電子インボイス制度へ対応するメリットとデメリットも紹介するので参考にしてください。
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電子インボイス制度への対応をやらないとどうなる?
「電子インボイス制度への対応が本当に必要かわからない」と感じる方は多くいます。理由は以下のとおりです。
- 「うちの会社は電子取引はしていない」
- 「軽減税率対象品目の販売をしていないから関係ない」
- 「売上1000万円以下の免税事業者だから制度の対象ではない」
上記の理由で電子インボイス制度への対応をやらないと何がおきるか見てみましょう。それぞれのケースごとに解説していきます。
電子取引はゼロだから
経営者が高齢だったり、現場仕事で現金による取り引きが多かったりすると「電子取引はほとんどしない」「請求書はすべて紙だ」という会社があるかもしれません。そのため「電子インボイス制度に対応しなくても良いのではないか」と思われるでしょう。
たしかに電子インボイス制度に対応しなくても業務を続けていけます。しかし次の理由から対応しておくと良いケースもあるのです。
- 実は電子取引をしている
- 取引先から電子インボイスを求められる
- 電子データの活用が可能
電子取引はしていないと思っても、実は行っていることがあります。たとえばECサイトで買い物をするとき、電子マネーで支払うとき、請求書をFAXで受け取りそのまま保存しているときなどは電子取引に該当します。
2023年10月1日以降は、日本全国で電子インボイス制度がスタートします。さらにインボイス制度自体はすでに世界の各国で導入されています。そのため仕入先や販売先から電子インボイスを指定されることが増えるでしょう。
電子インボイス制度に対応し、請求書などの経営データをすべて電子データにするとデータの分析や活用が可能になります。保存されたデータを見ながら経営判断をしていけるのです。
補足:現在は法規制が以前より緩和されているので、紙の請求書をスキャンして保存しやすい環境になっています。
これまでは国税関係帳簿や書類を電子保存する場合、原則3ヶ月前までに税務署長への申請と承認が必要な「事前承認制度」がありました。しかし今は廃止されています。「適正事務処理要件」も廃止され、スキャン後は原本を廃棄できるようになっています。
▶参考資料
国税庁「Ⅱ 適用要件【基本的事項】」
「電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件が改正されました」
軽減税率対象品目の販売をしていないから
電子インボイス制度へ対応するには、適格請求書発行事業者の登録をしなければなりません。しかし「自社は軽減税率対象品目の販売をしていないから登録しなくてもよいのでは?」という質問を耳にします。
適格請求書発行事業者への登録をするかどうかは任意です。しかし登録しておかないと適格請求書を交付できません。そのため取引先が適格請求書を受け取れなくなり、仕入税額控除ができなくなってしまいます。
▶参考資料
国税庁「インボイス制度に関するお問合せの多いご質問(令和4年3月25日掲載)問9」
売上1000万円以下の免税事業者だから
「売上1000万円以下の免税事業者だから電子インボイス制度の対象ではない」という意見があります。たしかに対象ではありませんが、2023年以降は、取引先が制度の対象となる課税事業者との取り引きを優先させる可能性があります。なぜなら課税事業者は仕入額控除に必要な適格請求書を発行できるからです。
では課税事業者になるための手続きをすべきなのでしょうか。答えはケース・バイ・ケースです。
なぜなら免税事業者はこれまで消費税納税額において優遇されてきたからです。しかし課税事業者になると納税義務が生じます。納税金額や取引先の事情を検討した上で、課税事業者になるか決めるようにしてください。
▶参考情報
公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」
電子インボイス制度に対応する9つのメリット
電子インボイス制度に対応することには9つのメリットがあります。
- コスト削減
- 保管スペースが不要
- 業務効率化
- 取引先との契約を継続
- データ入力の自動化
- 改ざん防止
- 海外とのスムーズな取引
- 在宅ワークがしやすい
- 検索がしやすい
各メリットについて説明していきます。
コスト削減
電子インボイス制度に対応することで、請求書や領収書を郵送したり印刷したりする必要がなくなります。これまで紙の書類管理に必要だった費用を削減できます。
保管スペースが不要
適格請求書は、課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存しなければなりません。紙の請求書を7年間保存しなければいけないとなると保管スペースの確保が大変です。しかし電子インボイスであれば保管スペースは不要です。
業務効率化
今は請求書を受け取ったときに、会計システムへアップロードし、経理へ申請しなければなりません。電子データの請求情報も、システムへ自分でアップロードする必要があります。
電子インボイス制度が始まると、請求情報の規格が全国で統一されます。そのため会計システムへの自動アップロードが可能になります。手動で行っていた申請処理が不要となり、業務を効率化できるのです。
取引先との契約を継続
この記事で何度か触れていますが、電子インボイス制度に対応するには適格請求書発行事業者へ登録しなければなりません。適格請求書発行事業者へ登録することのメリットは、取引先から契約を継続してもらいやすくなることです。
登録事業者であれば、適格請求書を発行できます。適格請求書が発行されることによって、取引先は消費税の免除が受けられる仕入税額控除を受けられます。これからは各事業者とも、取引先が登録事業者かどうか気にするようになるでしょう。
仕入額控除の計算を自動化
電子インボイス制度が始まると、仕入額控除の計算が大変になります。8%と10%の税率ごとに会計処理を行ない、仕入額控除が適用できるかどうか判断しなければなりません。手元の請求書が適格請求書か、免税事業者からの請求書かどうかも分類しなければなりません。これらの作業をしながら会計システムへ情報を入力していく仕事はかなり面倒です。
しかし電子インボイス制度に対応した会計システムを導入すれば、仕訳入力や仕入税額控除の計算を自動化できます。
改ざん防止
電子インボイス制度では電子データで会計情報を管理します。そのためデータが改ざんされるのではないかとセキュリティに不安を感じるかもしれません。電子インボイスでは、改ざん防止のために電子署名(eシール)の導入が総務省によって検討されています。
▶参考情報
総務省「組織が発行するデータの信頼性を確保する制度(eシール)の検討の方向性について」
海外とのスムーズな取引
電子インボイス制度ではPeppol(ペポル)という国際標準規格が採用されています。そのため日本の企業に使っている電子インボイスを、海外企業との取り引きの際にも使用できます。各国の企業と効率の良い取引を行えるのはメリットです。
在宅ワークがしやすい
これまで経理の仕事は紙ベースの請求書の処理でした。そのため会社に届く請求書を確認しなければならず、在宅ワークがしにくい状況でした。電子インボイス制度がスタートすると、オンライン上で会計データにアクセスできるため、出社せずに経理業務を行えます。
検索がしやすい
請求書や領収書が電子データで保存されると検索しやすくなります。データ保存の際には、検索しやすくするために以下の3項目をタグ付けしておくと良いでしょう。
- 取引年月日
- 金額
- 取引先名
会計システムや問い合わせ管理システムで自動でタグ付けしたり、上記の項目別に分類したりできます。
電子インボイス制度に対応するデメリット
電子インボイス制度に対応することには多くメリットがありますが、デメリットもあります。両方を把握しておくなら、どの程度対応すればよいか判断できるでしょう。
対応が大変
電子インボイス制度に対応するためには、会計ワークフローの調整、新たな業務の増加、新システムの導入など対応が大変です。
たとえば仕入税額控除の計算、項目が増えた適格請求書の作成、積み上げ計算採用時の計算方法の変化などに対応しなければなりません。多岐にわたる調整が必要なので今から準備していきましょう。
消費税の控除が受けられない
取引先が適格請求書発行事業者ではない場合、仕入額控除を受けられません。結果として消費税の控除が受けられないケースが出てきます。
補足:電子インボイス制度が始まる2023年10月1日以降6年間は、免税事業者からの仕入れについて一定割合が控除となる経過措置が設けられてます。

電子インボイス制度の対応を始めよう
電子インボイス制度へ対応するには、会計担当者への負担が増えます。しかし適切なシステムを導入していれば負担を最小限に抑えられます。
会計システムや請求書作成ソフトの導入を検討できるかもしれません。すでに導入していれば電子インボイス制度へ対応した機能があるかチェックしてください。
問い合わせ管理システムやメール共有システムなどで電子請求書の保管を自動化することもできるでしょう。
最後に
電子インボイス制度への対応をやらないと、取引先から対応を急に迫られたり最悪の場合には取引先を失ったりするかもしれません。
「自社は紙の請求書ばかりだから対応しなくても良い」と思っていても、実は電子データの請求書があるケースもあります。
制度施行後に急いで対応しなくても良いように、今から準備を進めておきましょう。まずは現行のシステムやワークフローで、電子インボイス制度に対応できるか確認してください。できない場合には、会計システムや問い合わせ管理システムの導入ができるでしょう。
電子インボイス制度への対応をすることで、自社の業務を効率化させ、取引先にも安心してもらえるようにしてください。