今回はコールセンターの研修に役立つ情報を紹介します。鼻濁音を正確に理解してお客さまにわかりやすい案内ができるようにしましょう。

「これが学校の東のガラス製の鏡だとがっちり考える外国人」なんて文章があったら、皆さんはどう声を出して読みますか?この文章の中には8つの「が」という音がありますが、すべての「が」を同じ音で読む人と、2種類の「が」の音を交互に使い分けて読んだ人、ばらばらに読み分けてしまった人など色々に分かれるはずです。この「やわらかく鼻にかけるガ行の音」のことは鼻濁音(びだくおん)と呼ばれており、現在は学校で教えない、意識する人だけが知っている日本語の発音テクニックになっています。

マイクを使う職業として、コンタクトセンター/コールセンターで働く人が意識すると、お客様とのさらに良いコミュニケーションが図れる可能性がありますので知っていて損はない知識です。

■NHK放送文化研究所:「鼻濁音の位置づけと現況」(“全文掲載”というリンクに記事

https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/20170401_6.html

「鼻濁音は,日常の会話で使われることが全国的には少なくなりつつある。その一方で、ある単語における鼻濁音と濁音の区別を情報として知りたいというユーザーは確実にいる」。

■「放送におけるガ行鼻濁音について : アナウンサーの意識調査に基づく考察」(「オープンアクセス」というリンクに記事)

https://ci.nii.ac.jp/naid/110004748894

「放送音声におけるガ行鼻濁音の扱いについて考察するため、全国の放送局53局のアナウンサー250名にアンケート調査をおこない、アナウンサーがガ行鼻濁音についてどのように考えているかを分析した。いくつかの項目については、アナウンサーの経験年数や成育地によって回答の傾向に差が見られた。ガ行鼻濁音に関する規範意識はアナウンサーの経歴が長くなるにつれて高まる傾向にあり、アナウンサーの成育地がガ行鼻濁音を使用していない地域の場合であっても、指導者の立場であればガ行鼻濁音を使用するよう指導すると考えていることがわかった」

■Wikipedia「鼻濁音」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BC%BB%E6%BF%81%E9%9F%B3

 「後述のように、共通語の有力な母体となった伝統的な東京方言が、厳格なガ行鼻濁音に関する法則を持つため、ガ行鼻濁音は日本語共通語の規範的・標準的な発音と見なされてきたことによる。例えば舞台芸術や映画の俳優の発話や、NHKなどテレビ・ラジオ局のアナウンサーの発音教育でも、従来は伝統的な東京方言の法則に基づく厳格なガ行鼻濁音の使用と使い分けが徹底されてきた。しかし、現在の一般的な日本の小学校・中学校などにおける国語教育では、鼻濁音の指導は学習内容に含まれていない。また、日本語の母語話者であっても、鼻濁音を用いるか用いないか、鼻濁音を規範的と捉えているかそうでないかには地域差や個人差がある」。

ちなみに私の場合、高校の放送部で全国大会入賞の先輩からこの鼻濁音について徹底的に練習させられ、さらに勉強した外国語では「ふつうのガと鼻濁音のが」で意味の違いが生まれるため、ますますこの2つの音の違いを意識するようになってしまいました。消えてゆくと予想する学者の方々も少なくありませんが、外国語を学ぶ人がさらに増えていく時代になると、逆に大切な日本語の音の特性として認知されていくようになる可能性もないわけではありません。

■文化庁-語形の「ゆれ」の問題 発音の「ゆれ」について(報告)3

http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/05/bukai02/09.html

NHKでは,早くから放送言語にガ行鼻音を採用している。「放送言語の現状の研究」によれば,「ガ行鼻音は江戸時代以来,東京で使われてきたものである。さらに全国的にみても、本州の大部分(東北・関東・中部・近畿地方。ただし,千葉県と群馬県を除く。)および徳島県が,ガ行鼻音を使う区域である。この点からみても,放送でガ行鼻音を使うことは,無理な処置ではないと言えよう。」と述べている。
戦前の小学校教育でも,ガ行鼻音を使うことを原則としていた。しかしながら,ここに注目すべきことには,東京の区部で,若い年齢層にこれを使わない傾向が出てきていることである。(金田一春彦・岡崎有鄰両氏の調査)
現在のところ,ガ行鼻音を使うほうが標準的であるとみとめてもよいであろうが,将来の問題として残るものと思われる。

少し練習してみるだけで、電話ごしに声を聞くお客様が「おっ、今日のオペレータさんはプロだな、美しい日本語を話すなぁ。きっとよく訓練・教育の行き届いているコールセンターなのだろう」と思ってもらえることになるかもしれません。